クルト・シュシュニック

クルト・シュシュニックの生涯と業績

クルト・アロイス・ヨーゼフ・ヨハン・エドラー・シュシュニック（1897年 - 1977年）は、オーストリアにおける重要な政治家として知られています。彼は1938年のオーストリアがナチス・ドイツに併合される際に逮捕されたことで、多くの歴史書に名を残しています。一般には「フォン・シュシュニック」としても知られていますが、オーストリアでは貴族制度が廃止されたため、現在は「シュシュニック」と呼ばれることが一般的です。

来歴

シュシュニックはオーストリア＝ハンガリー帝国に属するトレント近郊で生まれました。若い頃には法学を学び、第一次世界大戦ではオーストリア＝ハンガリー帝国軍で従軍しました。戦後、1924年にインスブルックで弁護士事務所を開業し、1919年からキリスト教保守団体に参加し政治活動を始めます。1927年には国民議会議員に選出され、その後も法務大臣や教育大臣として政治の中枢に関わります。

1934年、シュシュニックは暗殺されたドルフース内閣の後任として首相に就任し、オーストロファシズムと呼ばれる独裁体制を確立しました。彼は社会主義者に対する厳しい弾圧を続け、政治犯を大量に逮捕。経済の統制も施行していきました。1935年にはメディアの報道を規制する法律を制定し、護国団を解散させるなど、強権的な政治を推進しました。

アンシュルス前夜

シュシュニックはナチスを嫌悪しつつも、イタリアのベニート・ムッソリーニを頼りにしていました。1938年にはヒトラーと面会し、オーストリアのナチス指導者を入閣させるよう圧力を受けます。シュシュニックは2月24日に独立を維持する演説を行い、国民投票を提案しますが、その直前にナチスからの圧力が高まることになります。

3月には国民投票の実施が発表されるが、ヒトラーの侵攻指令も発動され、シュシュニックは国民投票の中止を余儀なくされます。その結果、シュシュニックは首相を辞任し、オーストリアはナチス・ドイツに併合されることとなります。

収容とその後の生活

シュシュニックはウィーン占領後、拘束され自宅軟禁された後にゲシュタポに収容されました。その後、ダッハウやザクセンハウゼンの強制収容所に移送されますが、彼は高位の収容者として比較的優遇された暮らしを送りました。この間に再婚し、子供ももうけます。1945年には解放され、アメリカに移住し政治学の教授としての生活を始めました。

彼はオーストリアへの帰国後も政界には復帰せず、長い隠遁生活を送りました。シュシュニックは生涯を通じてオーストロファシズムを正当化し続け、1977年に死去しました。

結論

シュシュニックの人生は、オーストリアの政治史における複雑さを象徴しています。彼の政策や行動は、時代の変化を背景にしたものであり、その後のオーストリアの歴史に深い影響を与えました。彼の生涯からは、政治の道徳的なジレンマや権力の持つ影響力について考えさせられるものがあります。

もう一度検索