クルト・ダールケ

クルト・ダールケ

クルト・ダールケ（Kurt Dahlke）は、1958年4月29日生まれのドイツ人ミュージシャンです。「ピロレーター（Pyrolator）」という活動名でも広く知られており、シンセサイザーやテープ編集といった電子音楽の手法を駆使した先駆的な作品を数多く発表してきました。彼の音楽キャリアは多岐にわたり、バンド活動、レーベル運営、そしてソロアーティストとしての活動を通じて、ドイツの音楽シーン、特にポストパンクやニュー・ウェイヴといったムーヴメントに大きな足跡を残しています。

音楽キャリアの始まり

ダールケの音楽活動は、1970年代後半から本格的にスタートします。特に重要なのが、1978年から1979年にかけてのバンドDAF（Deutsch-Amerikanische Freundschaft）への参加です。DAFは後にインダストリアルやエレクトロニック・ボディ・ミュージック（EBM）の先駆けとなる重要なバンドですが、ダールケの在籍は短期間に終わり、彼が関わったアルバムは初期の作品である『ファースト・アルバム』(Ein Produkt der Deutsch-Amerikanischen Freundschaft)のみとなりました。しかし、この初期の経験は、その後の彼の音楽性に影響を与えたと考えられます。

DAFを離れた直後の1979年、ダールケは新たな音楽プロジェクトを始動させます。それがバンド、デア・プラン（Der Plan）の結成です。デア・プランは1992年まで活動を続け、そのユニークなサウンドとアプローチで、当時のドイツのアンダーグラウンドシーンにおいて確固たる地位を築きました。

アタタック・レーベルとノイエ・ドイチェ・ヴェレ

クルト・ダールケの功績として特筆すべきは、1979年に音楽レーベルアタタック（Ata Tak）の立ち上げに深く関わったことです。アタタックは、当時の西ドイツから登場した多くの革新的なミュージシャンたちのプラットフォームとなり、ダールケ自身もプロデューサーやコラボレーターとして、レーベルからリリースされる様々な作品に関わりました。これらの作品群は、同時期にドイツで興隆していたニュー・ウェイヴ・ムーヴメント、すなわちノイエ・ドイチェ・ヴェレを代表するものとして広く認知されるようになりました。アタタックは単なるレコードレーベルに留まらず、当時の実験的で前衛的な音楽文化を形成する上で中心的な役割を果たしたと言えます。

多様な音楽活動

デア・プランやアタタックでの活動に加え、ダールケは他にも様々な音楽プロジェクトに参加しています。フェルファーベン（Fehlfarben）、ア・サーティン・フランク（A Certain Frank）、Bombay 1といったグループでの活動も行っており、その音楽的な探求心と活動範囲の広さを示しています。

ソロワーク：ピロレーター

ダールケは「ピロレーター」名義で、ソロの電子音楽アーティストとしても精力的に活動しています。シンセサイザーを基調とした独自のサウンドは、初期から多くのファンを獲得してきました。主なソロアルバムとしては、以下のような作品が挙げられます。

ディスコグラフィ (ピロレーター名義)

『インランド』 - Inland (1980年)
『アウスランド』 - Ausland (1981年)
『ワンダーランド』 - Wunderland (1984年)
『ホーム・テーピング・イズ・キリング・ミュージック』 - Home Taping Is Killing Music (1985年) ※with A. K. クロゾフスキー
『トラウムランド』 - Traumland (1988年)
『エヴリー・セカンド』 - Every Second (1990年) ※ピロレーター/シャーロック/サンバ名義
Neuland (2011年)
Con-Struct (2015年) ※with コンラッド・シュニッツラー

結論

クルト・ダールケ、あるいはピロレーターは、ドイツの電子音楽およびニュー・ウェイヴシーンにおいて、単なるミュージシャンとしてだけでなく、レーベル運営者としても重要な役割を果たした人物です。その革新的なサウンドと多岐にわたる活動は、今日の音楽シーンにも影響を与え続けています。

外部リンク

Ata Takホームページ
Dahlke on Discogs
* Dahlke on allmusic.com

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