クルト・ヴュートリッヒ

クルト・ヴュートリッヒについて

クルト・ヴュートリッヒ（Kurt Wüthrich）は、1938年10月4日にスイスのベルン州アールベルクに生まれた著名な化学者である。彼は1970年代から現在にかけて、タンパク質の構造解析において多次元核磁気共鳴法（NMR）の開発に寄与し、その功績が認められて2002年にノーベル化学賞を受賞した。大学生時代から化学、物理学、数学を学び、博士号取得後は各地で研究を重ねてきた。

経歴

ヴュートリッヒはベルン大学で学び、1964年にバーゼル大学から博士号を取得した。その後、彼は電子スピン共鳴の研究を行い、ポストドクターとしてカリフォルニア大学バークレー校で金属化合物の水和反応に関する研究を行った。1967年から1969年の間はベル研究所にてRobert G. Shulmanの指導の下、超伝導核磁気共鳴分光法に着手し、タンパク質の構造や動力学に関する研究をスタートした。その後、1969年にはスイスのチューリッヒに戻り、チューリッヒ工科大学で1980年まで生物物理学の教授を務めた。

現在も彼はチューリッヒとカリフォルニア州ラホヤにあるスクリプス研究所で活発に研究を行っている。

業績と研究

ヴュートリッヒの研究は、彼の大学院生時代に始まった電子スピン共鳴から派生し、金属化合物の触媒活性に関する探求に繋がった。ポスドク時代にNMR技術に取り組み始め、バークレーでは最新のNMR技術を駆使して研究を進めた。その後の研究では、タンパク質の構造と動力学を理解するための手法を確立していく。特に、ノーベル賞受賞者リヒャルト・R・エルンストと共同で開発した2次元NMR法は、タンパク質解析における重要なブレークスルーとなった。

また、接触距離を測る手法である核オーバーハウザー効果を導入し、タンパク質間の相互作用に関する新たな理解を促進した。これにより、彼はタンパク質研究の分野で多大な影響を与えることとなった。

主な受賞歴

ヴュートリッヒの業績は多くの賞に認められており、以下のような主な受賞歴がある：

• - ルイザ・グロス・ホロウィッツ賞（1991年、コロンビア大学）
• - ルイ＝ジャンテ医学賞（1993年）
• - 京都賞先端技術部門（1998年）
• - オットー・ワールブルク・メダル（1999年）
• - ノーベル化学賞（2002年）

ヴュートリッヒは、その革新的な研究を通じて生物物理学と化学の新しい領域を切り開いてきた。彼の業績は今後も、科学界に大きな影響を与え続けることが期待されている。

もう一度検索