クルメサヨリ

クルメサヨリ（久留米細魚）

クルメサヨリ（Hyporhamphus intermedius）は、サヨリ科に属する淡水魚の一種です。その名前は、1903年にジョーダンとスタークスによって、福岡県久留米市で最初に記載されたことに由来します。当時、筑後川の感潮域最上流部に位置する久留米市で見られるクルメサヨリは、有明海で獲れるサヨリとは区別されていました。地方名としては、「さより」、「よど」、「きす」、「せいれんぼう」などがあります。

分布

クルメサヨリは、本州、九州の有明海と橘湾、朝鮮半島南部から西部、台湾北部、渤海からベトナム北部にかけての東シナ海と南シナ海の内湾、河川河口・下流、湖の表層に生息しています。

形態

全長は15cmから30cm程度で、体形は細長いのが特徴です。下顎は頭長よりも長く、その下面は黒色をしています。尾鰭は浅く二叉しており、腹鰭の鰭条数や背鰭前方鱗数は、一般的なサヨリよりも少ない傾向があります。

生態

クルメサヨリは、イサザアミなどの小型甲殻類やユスリカ幼虫などを捕食します。繁殖期は春から夏にかけてで、アマモなどの水生植物に産卵します。卵には付着糸があり、水生植物などに絡みつく性質を持っています。

利用

食用としても利用され、煮干し、干物、から揚げ、丸干し、すり身汁、天ぷら、塩ゆでなど、様々な調理法で食されます。特に茨城県などが産地として知られており、旬は秋から冬にかけてです。鱗は薄くて小さく取りやすく、皮も非常に薄いのが特徴です。骨は柔らかく、透明感のある白身で血合いは褐色をしています。熱を通しても硬く締まらないため、様々な料理に適しています。

保存状況

近年、生息地の干拓や埋め立て、河口堰の建設、護岸整備、水質汚濁などによって個体数が減少しており、環境省レッドリストにおいて準絶滅危惧（NT）に指定されています。クルメサヨリの保全のためには、生息環境の保護と回復が不可欠です。

参考文献

環境省レッドリスト

脚注

準絶滅危惧（NT）：ごく近い将来、絶滅の危険性が高いと評価された種。

もう一度検索