クレオパトラ (1970年の映画)

『クレオパトラ』：時空を超えるSFアニメの冒険

1970年、虫プロダクションが制作したSFアニメ映画『クレオパトラ』は、手塚治虫の独創的な世界観が凝縮された一作です。同社と日本ヘラルド映画による大人向けアニメシリーズ「アニメラマ」の第2弾として公開され、宇宙開発が進んだ21世紀を舞台に、歴史とSFが融合した物語が展開します。

謎めいた「クレオパトラ計画」

物語は、地球の宇宙進出を妨害するパサトリネ星による陰謀「クレオパトラ計画」の解明から始まります。地球のある研究所の所長は、この計画の真相を探るため、3人の部下の精神を古代エジプト、クレオパトラが生きていた時代へとタイムスリップさせることを決断します。

整形美女クレオパトラと歴史上の人物たち

タイムスリップした3人の精神は、紀元前50年のエジプトで、独特の設定を持つクレオパトラと出会います。本作のクレオパトラは、醜い容貌を整形手術によって変え、絶世の美女となったという設定。彼女は、ローマの侵略者シーザー暗殺を企てるアレキサンドリアのゲリラ、アポロドリアに利用され、暗殺計画を実行に移します。

シーザーは、歴史に名を残すローマ軍の英雄ですが、本作では女好きで、時に病に苦しむ一面も描かれています。クレオパトラはシーザーを誘惑し、愛を育みますが、ローマへの凱旋を経て、彼の本性に幻滅。やがてシーザーを暗殺し、エジプトの女王として君臨します。

その後、クレオパトラはアントニウスと出会い、愛を誓い合いますが、ローマからのオクタビアンの侵攻によって、アントニウスは戦死。クレオパトラは、次々と暗殺を繰り返す生活に疲弊し、王宮を去るという、波乱万丈の人生を辿ります。

手塚作品らしいユーモアとパロディ

本作は、歴史を題材にしながらも、手塚治虫作品らしいユーモラスな演出や、当時の流行を反映したパロディが随所に散りばめられています。『サザエさん』や『カムイ外伝』といった人気漫画のキャラクターが友情出演するなど、独特の世界観を作り上げています。

特に、オクタビアンの男色家という設定や、その描写のためにアニメーターがゲイバーに通ったというエピソードは、当時としては非常に斬新で、手塚治虫自身のエッセイでも「本作全篇の圧巻の一つ」と評されています。

多彩なキャラクターと豪華キャスト

クレオパトラ役の中山千夏をはじめ、ハナ肇、なべおさみ、吉村実子など、豪華声優陣が当時のスター俳優・タレントを起用し、個性豊かなキャラクターたちに命を吹き込みました。シーザー、アントニウスといった歴史上の人物に加え、クレオパトラに仕えるヒョウのルパーや、ゲリラ組織に所属するリビアなど、魅力的なキャラクターが物語を彩っています。

現代への配信と作品への評価

『クレオパトラ』は、時代を超えてもなお、その独創的なストーリーと魅力的なキャラクターによって、多くの視聴者を惹きつけています。2024年には、YouTubeでの無料配信も行われ、再び注目を集めています。歴史、SF、そして手塚治虫独特のユーモアが融合したこの作品は、アニメ史に残る傑作として、今後も語り継がれていくことでしょう。

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