クレマンス・ド・オングリー

クレマンス・ド・オングリー（1293年 - 1328年）は、フランス王ルイ10世の2番目の王妃として知られています。彼女の生涯は、ヨーロッパの王室間の複雑な関係と、フランス王位継承をめぐる陰謀に深く関わっていました。

生い立ちと結婚

クレマンスは、ハンガリー王位請求者カルロ・マルテッロ・ダンジョと、神聖ローマ皇帝ルドルフ1世の娘クレメンティアの間に生まれました。彼女の兄はハンガリー王カーロイ1世であり、ヴァロワ朝初代の王となるフィリップ6世は父方の従兄弟にあたります。クレマンスは、ヨーロッパの主要な王家と血縁関係にあり、その出自は彼女の後の人生に大きな影響を与えました。

1315年、フランス王ルイ10世は、最初の王妃マルグリット・ド・ブルゴーニュが幽閉中に亡くなったため、クレマンスと結婚しました。マルグリットの死には暗殺説もあり、ルイの再婚を可能にするための陰謀だったとも言われています。クレマンスとルイの結婚は、フランスとハンガリーの関係を強化する意味合いもありました。

短い王妃の期間と王位継承問題

クレマンスは王妃となってからわずか1年後の1316年6月、ルイ10世が急死しました。当時クレマンスは妊娠しており、王弟フィリップが摂政として政治を主導しました。ルイ10世には、出生に疑義が持たれる王女ジャンヌがいましたが、フィリップは彼女の即位を阻止し、クレマンスの出産を待ちました。

同年11月、クレマンスは男児を出産し、その子はジャン1世として即位しましたが、わずか4日後には亡くなってしまいました。この短い治世の後、王弟フィリップがフィリップ5世としてフランス王位を継承しました。クレマンスは、フランス王位継承をめぐる複雑な政治状況の中で、重要な役割を果たしましたが、彼女自身が権力を握ることはありませんでした。

その後

王位継承後、クレマンスは宮廷を去り、アヴィニョンへ移り住みました。1318年には、エクス＝アン＝プロヴァンスのドミニコ会修道院に隠遁し、信仰生活を送りました。数年後にはパリへ戻りましたが、1328年に35歳という若さで亡くなりました。

クレマンス・ド・オングリーの生涯は、中世ヨーロッパの王室における結婚と政治的陰謀、そして王位継承の重要性を示す一例と言えるでしょう。彼女は短い期間ながらもフランス王妃としての役割を果たし、その後のフランスの歴史に影響を与えました。

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