クレンメン条約

クレンメン条約：ポンメルンとブランデンブルクの勢力関係

クレンメン条約は、1236年6月20日にポンメルン＝デミーン公ヴァルティスラフ3世とブランデンブルク辺境伯の間で締結された重要な条約です。この条約により、ヴァルティスラフ3世はブランデンブルク辺境伯領をポンメルン＝デミーンの宗主国として認め、シュタルガルト、ヴシュトロー、ベゼリッツといった地域をブランデンブルクに割譲することになりました。

条約締結の背景

13世紀初頭、バルト海沿岸地域ではデンマーク、ブランデンブルク辺境伯領、ポメラニアなどの勢力が複雑に入り乱れていました。1227年のボルンヘーフェトの戦いでデンマークが敗北すると、グライフ家が統治するポメラニア諸公は、勢力を拡大するブランデンブルク辺境伯領に対抗するための有力な同盟国を失いました。

1231年、神聖ローマ皇帝フリードリヒ2世は、アスカーニエン家のブランデンブルク辺境伯ヨハン1世とオットー3世をポメラニアの領主として承認しました。これはブランデンブルク辺境伯領のポメラニアに対する影響力が強まっていることを示す出来事でした。

一方、ポメラニアの内部でも変化が起きていました。メクレンブルク諸公がポメラニア西部のツィルツィパーニエンを支配し、東部のシュラーヴェ＝シュトルプはポメレリア公シフィエントペウク2世によって占領されるという状況でした。

ヴァルティスラフ3世の決断

このような状況下で、ヴァルティスラフ3世はブランデンブルクとの緊張状態を緩和する必要に迫られました。そこで彼は、クレンメン条約に同意することで、ブランデンブルクとの関係を安定させようとしました。また、この条約には、ヴァルティスラフ3世が後継者のないまま死去した場合の復帰権についても定められていました。これは、万が一の場合に備えて、ポメラニアの領土を確保するための措置であったと考えられます。

条約の内容

クレンメン条約の主な内容は以下の通りです。

ヴァルティスラフ3世がブランデンブルク辺境伯領をポンメルン＝デミーンの宗主国として承認
シュタルガルト、ヴシュトロー、ベゼリッツをブランデンブルクに割譲
ヴァルティスラフ3世が後継者なく死去した場合の復帰権に関する規定

この条約によって、ブランデンブルク辺境伯領はポメラニアにおける影響力をさらに強めることになりました。一方、ポメラニアは領土の一部を失ったものの、ブランデンブルクとの関係を安定させることで、当面の危機を回避することに成功したと言えるでしょう。

クレンメン条約は、13世紀のバルト海沿岸地域における勢力関係を理解する上で重要な史料です。この条約を通して、当時の政治情勢や各勢力の思惑を垣間見ることができます。

参考資料

条約の全文 in Boll, Franz: Geschichte des Landes Stargard bis zum Jahre 1471, Neustrelitz 1846（ラテン語）
* 条約の全文のドイツ語訳 in Boll, Franz: Geschichte des Landes Stargard bis zum Jahre 1471, Neustrelitz 1846（ドイツ語）

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