アスカーニエン家

アスカーニエン家：ドイツを彩った名門貴族の歴史

アスカーニエン家（アスカニア家とも）は、11世紀頃から神聖ローマ帝国内で勢力を拡大したドイツの名門貴族です。アンハルト公国を長く統治し、ブランデンブルク辺境伯、ザクセン公などの領邦君主を輩出、一族の血筋はロシア皇帝にも繋がっています。

アスカーニエン家のルーツ

アスカーニエン家の名は、ザクセン＝アンハルト州のアッシャースレーベン城に由来します。一族の祖とされるのは、11世紀に登場したエジコ・フォン・バレンシュテットです。彼はシュヴァーベンガウ伯として、アンハルト地方に勢力を築き、その領土は子孫に受け継がれていきました。

領土拡大と権力闘争

エジコの曾孫であるアルブレヒト熊公は、バレンシュテット伯領を相続し、さらにザクセン公位の継承権も主張しました。しかし、ザクセンはヴェルフ家のハインリヒ傲慢公が領有。アルブレヒト熊公は一時的にザクセンを支配するも、最終的にはハインリヒ獅子公に譲り、東方への領土拡大に注力しました。1157年、アルブレヒト熊公は初代ブランデンブルク辺境伯に任命され、新たな領土を築きました。

アルブレヒト熊公の死後、ブランデンブルクは長男オットー1世が、アンハルトは末子ベルンハルト3世が相続しました。1180年、ハインリヒ獅子公が皇帝フリードリヒ1世によって追放されると、ベルンハルト3世はザクセン公に任じられ、ザクセンを再び領有することに成功しました。

分裂と変遷

ベルンハルト3世の死後、ザクセンは2人の息子によって分割相続され、ヨハン1世の家系はザクセン＝ラウエンブルク、アルブレヒト2世の家系はザクセン＝ヴィッテンベルクをそれぞれ統治しました。一方、ブランデンブルク系は1320年に断絶。その後、ブランデンブルクはルードヴィヒ4世を経て、ホーエンツォレルン家の手に渡りました。アンハルト系も度重なる分割相続により、小規模な国家群へと分裂していきました。

選帝侯の地位とリューネブルク侯領

神聖ローマ帝国では、皇帝を選出する権利を持つ選帝侯の存在が重要でした。皇帝カール4世は、1356年の金印勅書によって選帝侯の数を7人に定め、自身の支持者であったザクセン＝ヴィッテンベルク系のルドルフ1世をザクセン選帝侯に任命しました。以後、ザクセン＝ヴィッテンベルクはザクセン選帝侯領と呼ばれるようになります。

ルドルフ1世の子孫は、ブラウンシュヴァイク＝リューネブルク家とリューネブルク侯領を巡る相続戦争を起こし、一時的に侯領を獲得しましたが、後にブラウンシュヴァイク＝リューネブルク家が再び領有しました。

アスカーニエン家の終焉とロシア皇帝

1422年、アルブレヒト3世の死により、ザクセン＝ヴィッテンベルク系は断絶。皇帝ジギスムントは、ヴェッティン家のフリードリヒ4世にザクセン選帝侯領を与えました。ザクセン＝ラウエンブルク系も1689年に断絶し、リューネブルク侯ゲオルク・ヴィルヘルムを経て、ハノーヴァー朝の領土に組み込まれました。

アンハルト系は、アンハルト＝ツェルプスト侯ヨアヒム・エルンストによって一時的に統一されましたが、彼の死後、再び分裂。しかし、アンハルト＝デッサウ侯レオポルト3世は、1807年にアンハルト公に昇格し、その孫レオポルト4世は分裂していたアンハルト諸領を再統一しました。アンハルト公国はドイツ帝国の一員となりましたが、1918年のドイツ革命により、最後のアンハルト公ヨアヒム・エルンストが退位し、アスカーニエン家によるアンハルト統治は終わりを迎えました。

特筆すべきは、18世紀のロシア女帝エカチェリーナ2世が、アスカーニエン家の分家であるアンハルト＝ツェルプスト侯の出身であることです。彼女は、ロマノフ家との血縁関係を通じてロシアに渡り、クーデターによって皇帝に即位。彼女の子孫は、1917年のロシア革命までロシア帝国を統治しました。

アスカーニエン家は、ドイツの歴史において重要な役割を果たした名門貴族です。その血筋は、領邦君主からロシア皇帝まで、広範な影響力を行使しました。一族の興亡は、中世から近世にかけてのヨーロッパの政治情勢を色濃く反映しています。

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