クレーミング競走

クレーミング競走：競走馬の売買が競走の一部となるシステム

クレーミング競走は、競馬における独特の競走形式で、出走馬が競走中または競走開始直前に売買されるという特徴があります。アメリカ合衆国では非常に一般的な競走形式ですが、日本を含む多くの国では実施されていません。本稿では、クレーミング競走の仕組みや特徴、世界におけるその広がりについて詳細に解説します。

クレーミング競走の概要

クレーミング競走は、競走馬の売買を競走そのものと一体化させたシステムです。通常の競馬では、競走馬は所有者の名義で競走に参加しますが、クレーミング競走では、事前に設定された価格で競走馬を購入する機会が参加者に与えられます。競走開始と同時に所有権が移転する点が大きな特徴です。これにより、競走馬の売買が、競走の結果と密接に関連付けられます。

アメリカにおけるクレーミング競走

アメリカ合衆国では、クレーミング競走が競馬の重要な一部を担っています。多くの競馬場で行われ、開催される競走の過半数を占めるケースも珍しくありません。ただし、賞金額全体に占めるクレーミング競走の割合は必ずしも高くはなく、地域や競馬場によっても差異が見られます。

クレーミング競走に参加するには、事前に競馬場の事務局に設定された売買価格（Claiming Price）を支払う必要があります。購入希望者は、レース開始時刻の10～15分前までに、購入希望を記した用紙を専用のボックスに提出します。レース開始と同時に所有権が移転し、競走の賞金は元の所有者が受け取ることになります。

レース中に馬が故障した場合、州や競馬場によって対応が異なり、取引がキャンセルになる場合もあれば、購入者の責任になる場合もあります。複数の購入希望者がいた場合は、抽選によって購入者が決定されます（Shake）。

クレーミング競走に出走した馬は、その後一定期間（州によって異なり、30日～廃止まで様々）、同価格以下のクレーミング競走への出走が禁止されます（Claiming Jail）。これは、クレーミング競走に出走した馬を保護し、不当な取引を防ぐための措置と考えられます。

売買価格の範囲は、1000ドルから15万ドルまでと幅広く、未勝利馬のみが出走できるメイデンクレーミング競走や、売買対象の馬とそうでない馬が混走するオプショナルクレーミング競走なども存在します。

クレーミング競走に出走することは、馬主や調教師から「これ以上の収益は期待できない」と判断されたことを意味することが多く、能力的に低い馬が出走することが多いと認識されています。しかし、中には、クレーミング競走からG1競走を制覇するなど、驚くべき活躍を見せる馬も存在します。

イギリス・アイルランドにおけるクレーミング競走

イギリスやアイルランドでもクレーミング競走は行われていますが、アメリカとは大きく異なります。まず、開催頻度が非常に低く、週に1回程度しか行われません。また、売買価格はレースごとに設定され、ハンデキャップの軽重に応じて価格が変動する仕組みになっています。

その他の国々

日本の中央競馬（JRA）ではクレーミング競走は行われていません。現役競走馬の売買は非常に稀です。一方、日本の地方競馬では、類似の制度としてセリングレースが過去に行われていたことがありますが、クレーミング競走とは、売買のタイミング（レース前かレース後か）に違いがあります。

まとめ

クレーミング競走は、競走馬の売買を競走と一体化させた、アメリカを中心に盛んに行われている独自の競走形式です。その仕組みやルールは地域や競馬場によって異なるものの、競走馬の経済的な側面と競走結果を密接に結びつける独特のシステムとなっています。クレーミング競走は、競馬の多様性と経済的な側面を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。

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