クロイスターズ

クロイスターズ美術館：中世美術と建築の粋を集めた場所

ニューヨーク市マンハッタン区、フォート・トライオン・パークに位置するクロイスターズ美術館は、メトロポリタン美術館の分館として、中世ヨーロッパ美術と建築を専門とする美術館です。その名の通り、複数の中世修道院の建築様式を模して1930年代に建てられました。

中世ヨーロッパの息吹を感じる建築

クロイスターズは、ハドソン川を見下ろす丘陵地帯に位置し、フランスから移築された5つの修道院回廊が建物の主要な構成要素となっています。これらの回廊は、サン＝ミシェル＝ド＝クシャ、サン＝ギレム＝ル＝デゼール、ボヌフォン＝アン＝コマンジュ、トリー＝シュル＝バイズ、フロヴィルといった各地の修道院から移され、解体された状態でニューヨークに運ばれました。1934年から1938年にかけて、フォート・トライオン・パークで再構築され、中世の雰囲気を今に伝えています。

周辺には、中世の写本や工芸品に描かれた植物が植えられた庭園や、修道院で見られた多様なハーブ園が広がっており、訪れる人々を中世の世界へと誘います。また、フォート・トライオン・パークとクロイスターズは、アメリカ合衆国国家歴史登録財にも指定されています。

ジョン・ロックフェラー2世の貢献

クロイスターズの設立は、ジョン・ロックフェラー2世からの寄付金によって実現しました。彼自身が所有していた中世美術品のコレクションは、元々アメリカ人彫刻家ジョージ・グレイ・バーナードが集めたものでした。バーナードは、自宅近くに中世美術品を集めた美術館を設立しており、ロックフェラー2世は彼から購入した美術品コレクションをメトロポリタン美術館に寄贈しました。このバーナード由来のコレクションとロックフェラー2世自身のコレクションが、現在のクロイスターズの中核となっています。

さらに、ロックフェラー2世は、バーナードの美術館の北側の土地を公園として開放し、新たな美術館建設のために順次購入していきました。建物の設計は、ニューヨークのリバーサイド・チャーチを手がけた建築家チャールズ・コレンズが担当し、ヨーロッパから移築された様々な様式の回廊を、統一感のある建物として再構築することに重点が置かれました。

中世美術の宝庫

クロイスターズには、約5,000点の中世西洋美術品が収蔵されており、特に12世紀から15世紀にかけての作品が充実しています。その中でも特に有名なのは、フランドルで制作された7枚のタペストリーからなる『ユニコーンの狩り』、初期フランドル派の画家ロベルト・カンピンによる『メロードの祭壇画』、『クロイスターズ・クロス』と呼ばれるロマネスク様式の祭壇用十字架などです。

また、リンブルク兄弟の『ベリー公の美わしき時祷書』や、フランス王シャルル4世妃ジャンヌ・デヴルーの依頼で制作されたジャン・ピュッセルの『ジャンヌ・デヴルーの時祷書』など、貴重な写本や装飾写本も数多く所蔵しています。

訪れる人々を魅了するギャラリー

クロイスターズには、様々なテーマに基づいたギャラリーがあり、中世美術の多様性を堪能できます。回廊や庭園を巡りながら、当時の生活や文化に触れることができるでしょう。1988年にはキリスト教美術品を収蔵するトレジャリ・ギャラリーが修復され、1999年には他のギャラリーも改装され、より快適に鑑賞できる空間となっています。

クロイスターズ美術館は、中世美術と建築に触れ、歴史と美を感じられる特別な場所です。ニューヨークを訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

もう一度検索