クロス (紋章学)

紋章学におけるクロス：多様な十字の表現

クロスは、紋章学において非常に重要なチャージ（図案）の一つです。これは、幅広の帯が垂直に交わり、シールド（盾）またはフィールド（背景）の端まで伸びる十字の形を指します。フェス（水平帯）とペイル（垂直帯）を組み合わせたものと解釈することもできます。

クロスの基本

最も基本的なクロスの形状は、4本の腕の長さがほぼ均等で、交点がエスカッシャン（盾の形）の中央、すなわちフェス・ポイントを通るものです。しかし、エスカッシャンの形状によって縦の腕よりも横の腕が短くなることが一般的です。クロスの幅はフィールドの約5分の1とされ、他のチャージが重ねられる場合は3分の1程度とされます。

クロス・クーペド：短く切られた十字

クロス・クーペドは、クロスの腕が短く切られ、フィールドの端に達しないものを指します。クロス・ヒューミッティとも呼ばれます。単独でクロスを配置する場合に用いられ、グリーク・クロス（ギリシャ十字）とも呼ばれます。赤十字やスイスの国旗など、キリスト教と直接関係のないシンボルにも採用されています。

クロスレット：複数の十字

クロスレットは、1つの紋章に複数のクロスを記述する場合に用いられます。2つまたは3つの場合は、crossesまたはcrossletsのどちらでも構いません。複数のクロスを用いる場合、フィールドの端に達するように描くと互いにぶつかるため、必然的にクーペドされます。4つ以上の場合はクロスレットと記述する必要があります。

クロスの種類

クロスには、他のチャージには見られないほど多くの種類が存在します。その数は30種以上、50種以上、300種以上とも言われます。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

プレーン・クロス（Plain Cross）：最も基本的な十字。
ソルタイアー・クロス（Saltire Cross）：斜め十字。
マリン・クロス（Marine Cross）：錨の形をした十字。
マルチーズ・クロス（Maltese Cross）：8つの角を持つ十字。
パティー・クロス（Pattee Cross）：腕が広がる十字。
フルーリー・クロス（Flory Cross）：腕にユリの紋章が付いた十字。
モリーネ・クロス（Moline Cross）：錨の先端のような形状の十字。

関連用語

紋章学：紋章に関する学問。
紋章：個人や団体を識別するための図案。
十字軍：中世ヨーロッパのキリスト教徒による遠征。
十字：キリスト教のシンボル。
ギリシャ十字：正方形に近い十字。
ケルト十字：輪が付いた十字。
スカンディナヴィア十字：横にずれた十字。
マルタ十字：マルタ騎士団のシンボル。
ラテン十字：縦長の十字。
* ロレーヌ十字：二重横棒の十字。

クロスは、紋章学において非常に重要な要素であり、その形状や種類によって様々な意味を表します。紋章に興味を持つ上で、クロスの知識は欠かせないものと言えるでしょう。

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