マルタ十字

マルタ十字:騎士道精神の象徴



マルタ十字は、8つの尖った角を持つ独特の十字模様です。単なる装飾ではなく、中世ヨーロッパの騎士修道会である聖ヨハネ騎士団マルタ騎士団とも呼ばれる)の象徴として、深い歴史と意味を持ちます。

起源と歴史



マルタ十字の起源は、11世紀イタリア、アマルフィ共和国に遡ります。当初はアマルフィ共和国の象徴として用いられていましたが、後に聖ヨハネ騎士団がそのシンボルとして採用しました。十字軍の時代から用いられてきた十字のシンボルを基に、特徴的な8角形がデザインされています。

8つの美徳



マルタ十字の8つの角は、騎士道精神を体現する8つの美徳を象徴するとされています。これらの美徳は、騎士たちにとって行動規範として重要な役割を果たしました。8つの美徳は一般的に以下の通りです。

忠誠心: 騎士は、自らの誓約と所属する組織に忠実であること。
敬虔さ: 深い信仰心と宗教への敬意を持つこと。
率直さ: 正直で、偽りのない行動をとること。
勇敢さ: 危険を恐れず、正義のために戦う勇気を持つこと。
名誉: 高潔な品格と、名誉を守るための行動をとること。
死を恐れないこと: 正義のためならば、死をも厭わない覚悟を持つこと。
弱者の庇護: 弱い者や貧しい者を保護し、助けること。
教会への敬意: キリスト教信仰と教会への深い敬意を示すこと。

世界への広がり



現在でも、マルタ十字はマルタ騎士団をはじめ、多くの組織や国家で象徴として用いられています。

国家・組織における使用例



マルタ共和国: 国のシンボルの一つとして、硬貨や国章などに使用されています。
イギリス: ライフル連隊の紋章として広く用いられており、世界初の切手であるペニー・ブラック消印にも使用されました。バス[[勲章]]のデザインにも影響を与えています。
ドイツ: プール・ル・メリット[[勲章]]を始め、多くの勲章のデザインに用いられています。メクレンブルク=シュトレリッツ郡の紋章にも見られます。
スウェーデン: セラフィム勲章や剣勲章など、王室が授与する勲章のデザインに用いられています。
オーストラリア: クイーンズランド州の州章の一部として使用されています。
スイス: 時計メーカーヴァシュロン・コンスタンタンのシンボルマークとして使用されています。

その他



聖ラザロ騎士団の紋章やウォリス・フツナの旗にもマルタ十字が用いられています。また、アメリカセンノウという植物の花弁の形がマルタ十字に似ていることから、英語圏では「Maltese Cross」と呼ばれています。機械工学においても、ゼネバ機構がその形状から「マルタ十字機構」と呼ばれることがあります。

混同されやすい十字



マルタ十字と似た形状の十字はいくつか存在し、しばしば混同されます。消防隊の聖フロリアヌス十字や、マルタの国旗に描かれているジョージ・クロスなどは、マルタ十字とは異なるものです。

まとめ



マルタ十字は、その美しい形状だけでなく、騎士道精神と深い歴史を象徴する重要なシンボルです。世界中で様々な場面で使用され続けており、これからもその存在感を保ち続けることでしょう。

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