クロトル

クロトルは、中世アイルランドの伝説に登場する女性であり、アイルランド上王エオヒド・フェドレフの娘として知られています。彼女は、コナハトの女王メイヴの姉妹でもありました。彼女の物語は、王位継承をめぐる一族の争いと、近親相姦という衝撃的な要素によって彩られています。

クロトルにはフィンデムナという三人の兄弟がいました。彼らは王位を求めて父親であるエオヒド・フェドレフと争っていました。クロトルは、兄弟たちが跡継ぎを残せずに死んでしまうのではないかと深く憂慮していました。そこで彼女は、大胆な行動に出ます。兄弟たちを誘惑し、関係を持ったのです。その結果、彼女はルギド・リアブ・ンデルグを身ごもりました。

皮肉なことに、クロトルの兄弟たちは、ルギドが妊娠した翌日に戦死してしまいます。そのため、ルギドは彼らの正当な跡継ぎとして認められ、後にアイルランド上王の座に就きました。クロトルの近親相姦は、結果として王家の血統を維持することになったのです。

しかし、クロトルの物語はここで終わりません。彼女はその後、自身の息子であるルギドとも関係を持ち、クリムタン・ニア・ナールを妊娠します。クリムタンは後にアイルランド上王となりました。この出来事は、クロトルがクリムタンにとって母親であると同時に、叔母であり、祖母でもあるという複雑な関係を生み出しました。

クロトルの名は、アイルランドのロングフォード県にあるイニシュ・クロトラン島にその名を残しています。この島は、彼女にちなんで名付けられたと伝えられています。

クロトルの物語は、アイルランドの伝説におけるタブーと権力、そして血統の複雑さを象徴する存在として、今日まで語り継がれています。彼女の生涯は、近親相姦という倫理的に問題のある行為を通して、王家の血統を維持しようとした女性の葛藤と、その結果として生じた複雑な人間関係を描き出しています。

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