クロネコファックス

クロネコファックスとは

クロネコファックスは、ヤマト運輸株式会社とその関連会社であるヤマトシステム開発株式会社によって提供されていた公共向けのファクシミリサービスです。かつて、全国の主要なコンビニエンスストアと提携することで、自宅にファックス機器がない利用者でも、手軽に書類の送受信を行える環境を提供していました。

コンビニでの送信プロセス

このサービスを利用して書類を送信する場合、利用者は提携するコンビニエンスストア（ファミリーマート、ローソン、ミニストップ、デイリーヤマザキ、ポプラ、コミュニティストアなど）に設置されている多機能コピー機（マルチコピー機）を使用しました。操作方法は非常に簡単で、原稿をセットし、画面に表示されるメニューからファックス送信を選択後、宛先となるファックス番号などを入力するだけでした。通常のコピーを取るのとほぼ変わらない感覚で操作できたため、多くの人々にとって利用しやすいサービスでした。カラー原稿の送信にも対応していました。送信設定が完了し、送信処理が行われた後、画面で送信内容（枚数や料金など）が表示され、利用者は指定された通信料金をコイン投入口に硬貨を入れるか、あるいはICカードなどで支払うことで一連の手続きが完了しました。

サービス提供開始当初は、一部店舗に専用のファクシミリ電話機が設置されており、そちらで送信手続きを行い、料金はレジカウンターで支払う形式が取られていました。しかし、時代と共にコンビニの多機能コピー機が高性能化・普及したことで、そちらでの操作が主流となりました。

コンビニでの受信プロセス

クロネコファックスは、外部のファクシミリ機器（自宅やオフィスなど）から送信された書類をコンビニで受け取る機能も提供していました。コンビニで書類を受け取りたい場合、送信元は自らのファクシミリ機器で発信者番号通知の設定を有効にした上で、クロネコファックスが指定する電話番号へ書類を送信する必要がありました。送信が正常に完了すると、送信元のファックス機器に「受付完了通知書」が自動的に返送されます。この通知書には、その送信された書類固有の10桁の「文書番号」が記載されています。この文書番号を受取人に伝えることで、受取人はコンビニで書類を入手できました。

受取人は、提携コンビニの多機能コピー機に行き、操作パネルでクロネコファックスの受信サービスを選択します。そして、通信料金を支払い、事前に知らされた10桁の文書番号を入力することで、システムに登録されている書類データを印刷し、受け取ることが可能でした。

ただし、受信のためにシステムに登録された書類データには有効期限がありました。送信が完了した日の翌日24時（すなわち翌々日の午前0時）を過ぎると、その書類データはシステムから自動的に削除され、以降は文書番号を入力しても印刷・受け取りができなくなりました。このため、重要な書類の受け取りは、期限内に速やかに行う必要がありました。

姉妹サービス「クロネコ@ファックス」

クロネコファックスとは別に、主に企業や法人を対象とした関連サービスとして「クロネコ@ファックス」が存在しました。このサービスでは、ファックスしたい書類をパソコンや携帯電話から指定のメールアドレスへ添付ファイルとして送るか（最大A3サイズ30枚まで、かつ容量2048キロバイトまで）、あるいは書面を直接ファクシミリ機器から指定番号へ送信登録するという方法で利用しました。登録が完了すると、システムから受付番号が登録者のメールアドレスに通知されました。書類の受け取りは、提携するコンビニエンスストア（主にミニストップやセブン-イレブン）に設置された多機能コピー機のネットワークプリントサービスを利用して行いました。このサービスは、ユーザー登録や月額の基本料金が一切不要で、手軽に利用できる点が特徴でしたが、2017年2月28日をもってサービスを終了しています。

サービスの現状

長年にわたり、急な書類のやり取りや自宅にファックスがない人々の便利な手段として利用されたクロネコファックスですが、ファクシミリという通信手段自体の利用機会の減少や、インターネットを通じたデータ送受信サービスの普及など、時代の変化に伴いその役割を終えました。現在、クロネコファックスサービス自体は終了しており、コンビニ店舗での利用はできません。手軽な公共のファックスサービスとして、かつて多くの人々の書類送受信を支えたサービスでした。

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