クロハゲワシ

クロハゲワシ（黒禿鷲）

クロハゲワシ（学名：Aegypius monachus）は、タカ目タカ科に分類される特異な鳥類で、唯一の種としてクロハゲワシ属を形成しています。この鳥は、旧和名として「ハゲワシ」とも呼ばれ、特徴的な外見と生態で知られています。

分布

クロハゲワシは、ヨーロッパ南部、トルコ、中央アジア、そしてチベットや中国東北部に広く分布しています。主に留鳥として生活していますが、一部の個体は冬季にインドや西南アジアに渡ることがあります。日本においてはこの鳥が迷鳥として観察されることがあり、特に西日本で冬の時期に記録が多くみられます。また、北海道から沖縄にかけて目撃されることもあります。

形態

オスのクロハゲワシは全長100～110センチメートルで、翼を広げると250～290センチメートルにも達します。日本国内で記録されたタカ科の鳥の中では最大のサイズを誇ります。全身は褐色の羽毛で覆われ、特に首周りには襟巻きのような羽毛があります。頭部は羽毛が無く、灰色の皮膚が見えています。嘴は非常に太く、釘のように曲がっており先端は黒色、基部は灰色です。若鳥は嘴の色が異なり、灰色の部分が黄色や桃色を帯びています。足は通常、灰色、黄色、または桃色のいずれかです。

生態

主に乾燥した草原や高地に生息し、樹上に巣を作ります。日本国内では、河口や農耕地、さらには河原の木の上で単独で見かけることが多いです。日中は上昇気流に乗って長時間にわたって帆翔を行い、周囲を観察します。食事は主に肉食性で、動物の死骸を主な食料としていますが、時にはリクガメや小型哺乳類を捕まえて食べることもあります。繁殖は卵生で、巣の近くではあまり鳴かない傾向がありますが、しわがれた声で「ピィーイ」と鳴くことがあります。

保全状況

クロハゲワシの保全状況は「NEAR THREATENED」とされ、ワシントン条約附属書IIの対象です。生息地の開発により、営巣に適した樹木や食糧となる動物の死骸が減少し、個体数は減少しています。日本では熊本県山江村で1972年に保護された迷鳥が「タカちゃん」と名付けられ、村のマスコットとして親しまれました。しかし2014年に死亡してしまいました。

まとめ

クロハゲワシは興味深い生態と特長を持つ鳥類であり、その生息状況は人間活動の影響を大きく受けています。私たちがこの種を守るためにできることについて、一層の理解が求められています。これを機に、野鳥への関心を深めていただければ幸いです。

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