クロフト・サーキット

クロフト・サーキット：飛行場からモータースポーツの聖地へ

イギリスのノースヨークシャー州、ダルトンオンティーズ近郊に位置するクロフト・サーキットは、全長約3キロメートルのターマックサーキットです。元々は第二次世界大戦中にRAFクロフトとして使用されていた飛行場跡地を起源とし、現在では英国ツーリングカー選手権（BTCC）や英国ラリークロス選手権など、数々のモータースポーツイベントが開催される人気サーキットとして知られています。

戦時下の歴史：RAFクロフト

クロフト・サーキットの歴史は、第二次世界大戦の勃発期に遡ります。1940年代初頭、現在のサーキットの場所にRAFクロフト飛行場が建設され、ウェリントンやランカスターなどの爆撃機部隊の拠点となりました。多くの爆撃機がドイツからの帰還中に事故に見舞われ、その中にはアトリーヒルに墜落し、全乗組員が犠牲となった痛ましい事故も含まれていました。飛行場周辺の道路には、爆弾などの軍事資材の保管庫があり、戦時下の生活を垣間見ることができる名残が、現在も周辺に残っています。終戦後、RAFは飛行場を放棄し、主要な建造物は取り壊されましたが、一部の建物は地元で再利用されたり、農地に残されたりしています。

モータースポーツへの転換

1947年、実業家のジョンニー・シャムが土地をリースし、ダーリントン＆ディストリクトエアロクラブを設立しました。しかし、クラブは数年で解散し、飛行場はしばらくの間放置された状態が続きました。1940年代後半から1950年代にかけて、ダーリントン＆ディストリクトモータークラブが飛行場の滑走路などを利用してモーターレースを開催するようになり、本格的なサーキット建設への動きが始まりました。1962年にはブルース・ロプナーらが土地を購入し、1964年にサーキットが完成。最初のレースには3万から5万人の観客が集まり、大きな成功を収めました。

ラリークロス時代の隆盛とターマックレースの復活

初期のクロフト・サーキットは様々なレースを開催していましたが、1960年代後半には南部イングランドのサーキットの人気が高まり、クロフトは苦戦を強いられます。1967年にはラリークロス開催に舵を切り、ITVの「World of Sport」で放映されるなど注目を集めました。しかし、1980年代初頭には収益性の低下やサーキットの老朽化などの問題から、サーキットレースは一時中断されました。地元の農家ジョージ・シールド氏らの尽力により、ラリークロスは継続され、FIAインターナショナルカップやFIAヨーロッパラリークロス選手権の開催地としても選ばれるようになりました。1990年代後半にはターマックレースが復活し、オートバイやカーレースの開催地として再び人気を集めました。

近年の発展とBTCC

1997年には、サーキットの大規模な改修工事が行われ、全長が約3.4キロメートルに延長されました。ピット、パドック、コントロールタワー、観客席などが整備され、近代的なモータースポーツ施設へと生まれ変わりました。改修後すぐにBTCC（英国ツーリングカー選手権）とブリティッシュスーパーバイク選手権が開催され、特にBTCCは現在も継続してクロフトで開催されています。ジェームス・トンプソンなど、多くのドライバーがクロフトを「得意コース」として挙げており、地元に近く、コースをよく知っていたことが理由として挙げられています。トンプソンは1998年にクロフトで初優勝を果たしています。

クロフト・サーキットの未来

飛行場跡地から、英国を代表するモータースポーツ施設へと成長したクロフト・サーキット。長い歴史と伝統、そして近代的な設備を兼ね備えたクロフト・サーキットは、これからも多くのモータースポーツファンを魅了し続けることでしょう。

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