クロルデン

クロルデン：その特性と環境・人体への影響

クロルデンは、有機塩素系化合物に分類される殺虫剤です。かつては、その高い殺虫効果から農業やシロアリ駆除などに広く用いられていましたが、現在では、その毒性と環境への負荷から、製造、販売、使用が厳しく規制されています。

用途と規制の歴史

日本では、1950年代から稲作や野菜栽培における害虫駆除、さらに造林業においても使用されていました。しかし、その高い毒性と環境への残留性、特に水生生物やミツバチへの深刻な影響が明らかになるにつれ、1968年には農薬登録が失効。その後もシロアリ駆除剤として使用されていましたが、1986年には特定化学物質に指定され、全ての用途での製造・販売・使用が禁止されました。現在では、POPs条約にも基づき、国際的にもその使用は原則禁止されています。ピーク時には、年間2000トン以上の輸入があったと記録されています。

クロルデンの性質と危険性

クロルデンは、不燃性ですが、有機溶剤を含む製剤は引火性を持つ場合があります。燃焼や塩基との接触により、塩素、ホスゲン、塩化水素などの有毒なガスが発生します。さらに、鉄や亜鉛、プラスチック、ゴムなどを腐食する性質も持ち合わせています。

人体への影響も深刻です。吸入や経口摂取、皮膚からの吸収によって、錯乱、痙攣、嘔吐などの症状を引き起こす可能性があり、一日許容摂取量はきわめて低い値に設定されています。水生生物やミツバチに対する毒性も非常に強いことが知られています。

環境への影響と残留性

クロルデンの残留性は非常に高く、環境中での残留期間は長期間に及びます。ある事例では、シロアリ駆除剤として使用されたクロルデンが、数ヶ月から半年かけて地下水や河川を汚染したことが報告されています。また、住宅地でのシロアリ駆除後も、数年経ってからクロルデンが検出されたという報告もあります。これらの事実は、クロルデンの環境への深刻な影響を示しています。

まとめ

クロルデンは、かつて高い殺虫効果を発揮した一方で、人体と環境への深刻な影響が明らかになった、典型的な有機塩素系殺虫剤です。その高い毒性と残留性から、現在ではその製造・使用は世界的に禁止されています。本事例は、農薬の使用における安全性と環境への配慮の重要性を改めて認識させるものです。今後、環境負荷の少ない代替物質の開発と利用が求められています。 環境問題への意識を高め、持続可能な社会の実現に向けて、私たちはより一層の努力を続ける必要があります。

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