塩素

塩素（Chlorine）

塩素は原子番号17を持つ元素で、化学記号はClです。この元素は強い反応性を持ち、多くの化合物を形成します。特に、塩素の単体である塩素分子（Cl2）は、常温常圧において刺激臭を持つ黄緑色の気体です。塩素は腐食性があり、人体にも危険をもたらすため、取り扱いには注意が必要です。

概要

塩素は1774年にスウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレによって最初に独立して発見され、当初は「脱フロギストン海塩酸気」という名前が付けられました。その後、1810年にハンフリー・デービーがこの元素を「ch」関係の色名に基づいてchlorineと名付けました。日本語では江戸時代後期に宇田川榕菴によって「塩素」という名称が初めて用いられました。

性質

塩素の電子親和力が非常に高いため、通常は1価の陰イオンとして存在します。物理的性質として、塩素は黄緑色の気体であり、その分子量は70.90です。融点は-101°C、沸点は-34.1°C、比重は2.49です。この性質から、塩素は非常に反応性が高く、様々な金属や有機物と反応して塩化物を形成します。

塩素は強力な漂白剤および殺菌剤として知られており、水道水やプールの消毒にも使用されますが、気体としての取り扱いは難しく、安全を考慮して一般には次亜塩素酸ナトリウムの形で使用されることが多いです。

地球上の塩素の存在

地球上では、塩素は92の天然元素の中で18番目に多く存在するとされています。主に鉱物やイオン、気体の形で存在し、マントルには99.6%、地殻には0.3%、海水には約0.1%の割合で存在しています。具体的には、マントルにおいてはケイ素10000個に対し190個の塩素原子が含まれ、海水中の塩素濃度は19.354g/kgです。

生産方法

現在、塩素は主に塩化ナトリウム水溶液からイオン交換膜法を用いて生産されます。この方式では、水酸化ナトリウムとともに生成され、より効率的なガス拡散電極法が最近導入されています。日本では、2016年度に343万トンの塩素が生産され、液体塩素も47万トンが生産されています。

人体・環境への影響

塩素は強い毒性を持ち、第一次世界大戦中に化学兵器として使われた歴史があります。吸引することで呼吸器系に損傷を与え、高濃度では皮膚や粘膜を刺激して重大な健康問題を引き起こすことがあります。塩素はまた、漂白剤との化学反応により有毒なガスを発生させる危険性もあります。加えて、オゾン層への影響も指摘されており、塩素がオゾン分子を分解するため、環境への影響が懸念されています。

塩素は様々な化合物を形成し、特に有機塩素化合物は工業製品として広く使用されていますが、その毒性と環境への影響から多くの国で規制されています。

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