クローム・ドリームズ

クローム・ドリームズ (Chrome Dreams)

ニール・ヤングの46作目のスタジオアルバム『クローム・ドリームズ』は1977年春に最初にアセテート盤としてまとめられた後、1970年代から海賊版として広く流通していましたが、2023年8月11日に正式にリリースされ、多くの批評家から高く評価されました。

レコーディングの背景

『クローム・ドリームズ』には、ヤングが2年間にわたって収録した多様な楽曲が集められており、様々な協力者とのセッションから生まれたものです。このアルバムに収録されている最古の楽曲「ベツレヘムの誇り」は1974年に録音され、未発表のアルバム『ホームグロウン』において最後のトラックとして位置付けられている予定でした。また、「セダン・デリバリー」は『ズマ』セッション時に録音されたバージョンで、テンポがゆっくりで追加の詩節が加えられています。

他の楽曲「トゥー・ファー・ゴーン」、「ホームグロウン」、さらには「ライク・ア・ハリケーン」なども、1976年のヨーロッパ・ツアーの前にヤングのブロークン・アロー・ランチでクレイジー・ホースと共に録音されました。「トゥー・ファー・ゴーン」は1989年のアルバム『フリーダム』まで発表されずにいました。また、「ストリングマン」というバラードは、ジャック・ニッチェのために書かれ、1976年のヨーロッパ・ツアーでの演奏を元に仕上げられたものです。18年後、ヤングはこの曲をアンプラグド公演で再び演奏しています。

さらに『パウダーフィンガー』『ポカホンタス』『キャプテン・ケネディ』は、2017年リリースの『ヒッチハイカー』からのセッションの作品です。「ポカホンタス」は『ラスト・ネヴァー・スリープス』に収録されたバージョンと同じく、オーバーダブなしで収録されています。

アルバムのリリース経緯

アルバムの制作には、1977年にアセテート盤としてまとめられ、その後1990年代に海賊版業者によって広く流通した経緯があります。アルバムタイトルの「クローム・ドリームズ」は、スタジオのテープリールに描かれたスケッチから由来しています。ヤングは「クローム・ドリームズとは、ブリッグスが描いた55年式クライスラーのグリルのスケッチだった。それを元に美しい女性像が浮かんだ」と述べています。

公式リリースはその美術的な表現を持ちながら、アートワークのクレジットはミュージシャンのロニー・ウッドに帰されています。2023年6月30日、ニール・ヤングはこのアルバムの正式なリリース日を発表しました。

評価

『クローム・ドリームズ』はMetacriticで94点を獲得し、批評家からの評価も非常に高かったです。グライド・マガジンのダグ・コレットは、このアルバムがカナダのロックシーンを象徴するものであり、「ヤングの最高傑作の一つ」と評価しています。ピッチフォークはこのアルバムを「ベスト・ニュー・リイシュー」に選び、スティーブン・トーマス・アーレワインはその魔法のような魅力を称賛しました。ガーディアン紙でも「70年代におけるヤングの最高傑作」との評価を受けており、アルバムの価値が多くの人々によって再認識されています。

収録曲

アルバムには多くの名曲が含まれていますが、具体的な数曲を挙げると、「Pocahontas」、「Will to Love」、「Star of Bethlehem」、「Like a Hurricane」などがあります。これらの楽曲はすでに存在した作品の新しい版であり、それぞれの曲に独自の新たなエッセンスが加えられています。

参加メンバー

アルバム制作には、ヤング本人を中心に多くの演奏者が参加しました。その中には、フランク・サンペドロやビリー・タルボットなどが含まれ、共演の幅の広さが表れています。

制作スタッフ

制作はデイヴィッド・ブリッグス、ティム・マリガン、エリオット・メイザーなどが行い、アートディレクションにはジェニス・ヘオ、カバーアートにはロニー・ウッドが手掛けています。これらのクリエイターたちの協力が、アルバムの完成度を高めています。

『クローム・ドリームズ』は、長い年月を越えてその価値を再確認され、多くの人々に愛される作品となったのです。

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