クローヴィス文化

クローヴィス文化は、後期氷河期の終わり頃、具体的には放射性炭素年代測定に基づき約13,000年前から8,500年前（1950年を基準とするB.P.年代）にかけて、主に北米大陸で繁栄したアメリカ先住民の石器文化です。この文化を特徴づけるのは、独特な樋状剥離が施された尖頭器です。この尖頭器は、1930年代にニューメキシコ州東部のリャノ・エスタカード地方に位置するクローヴィスという町の近郊、ブラックウォーター・ドロウⅠ遺跡で、マンモスの骨とともに発見されました。この発見が、クローヴィス文化の名前の由来となっています。

クローヴィスの尖頭器は、その形状と製作技術から、当時の狩猟技術を物語る重要な遺物です。一般的に、長さは7〜12cm程度で、基部から1/4から1/2の範囲に樋状の剥離が施されています。ただし、地域や時代によって形状のバリエーションが見られ、末広がりの魚尾形のものや、小型のものが存在します。これらの尖頭器は、テネシー州やケンタッキー州など、ミシシッピ川中流域に多く分布していますが、アメリカ合衆国全域やメキシコでも発見されており、アメリカ大陸全体に広がっていたことがわかります。

ブラックウォーター・ドロウ遺跡からは、マンモスの他に、ラクダ、馬、バイソンなどの動物の骨も発見されています。また、スクレーパー、石刃、たたき石、剥片石器といった、狩猟や加工に使われたと考えられる様々な石器も出土しています。アリゾナ州のレイナー遺跡では、マンモスの骨の他に、ウマ、バク、バイソンなどの骨が発見されており、コロラド州のデント遺跡では、マンモスの骨とともにクローヴィスの尖頭器が出土しています。これらの遺跡は、狩猟した動物を解体し、食料や毛皮を得るための「キルサイト」と呼ばれる場所であったと考えられています。

一方、アリゾナ州のマレー・スプリングス遺跡では、尖頭器やマンモスの骨に加えて、オオカミの骨や、12,000点もの剥片、両面調整された石器、そしてマンモスの骨に穿孔を施した骨角器が発見されました。これらの発見は、単なる狩猟の場所以外の、生活に関わる活動が行われていたことを示唆しています。また、ワパナケット8遺跡のように、多数の尖頭器の他に、のみや彫刻刀として使われたグレーバー、ナイフ形石器、スクレーパー、剥片石器が発見されたものの、動物の骨が全く見られないという、他のキルサイトとは異なる様相を示す遺跡も存在します。このことから、この遺跡は住居跡であった可能性が指摘されています。

クローヴィス人は、一般的に新世界における最初期の居住者とされ、南北アメリカ大陸のすべての先住民文化の祖先と考えられてきました。しかし近年、チリのモンテベルデ遺跡など、クローヴィス文化よりも古い年代の遺跡が発見されるようになり、この考え方は再考が求められています。

クローヴィス文化の発見は、1929年に19歳のジェームズ・リッジレイ・ホワイトマンがニューメキシコ州東部のブラックウォーター・ドロウで遺跡を発見したことに始まります。しかし、その初期の発見はすぐには認められず、1932年にフィラデルフィア自然科学アカデミーのエドガー・ビリングス・ハワードが、クローヴィスで発掘された尖頭器によって、クローヴィス文化の存在が広く認知されるようになりました。ハワードは、バーネット洞窟での発掘調査を中断し、ホワイトマンの発見したブラックウォーター・ドロウ遺跡に向かい、そこで追加の発見を詳細に調査しました。このブラックウォーター・ドロウ遺跡の発掘報告が、クローヴィス文化に関する最初の詳細な研究報告であると考えられています。

クローヴィス文化の研究は、アメリカ大陸の先史時代を理解する上で非常に重要な意味を持っています。しかし、その起源や広がり、そして後続の文化との関係については、未だ多くの謎が残されており、今後の研究の進展が期待されています。

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