尖頭器

尖頭器とは

尖頭器（せんとうき）は、旧石器時代に登場した、先端が鋭く尖った打製石器です。主に狩猟用の槍や投げ槍の先端に取り付けられ、動物を狩るための武器として使われました。海外では広く、先端が尖った石器全般を指すことがありますが、日本では刃潰し剥離によって仕上げられた石器を「ナイフ形石器」として区別し、槍先として使われたものを特に尖頭器と呼びます。

尖頭器の種類と特徴

尖頭器は、その形状によって大きく2つのタイプに分けられます。細長いタイプと幅広のタイプがあり、それぞれ使用目的や製作技術に違いが見られます。また、製作された年代によっても分類され、約3万年以前の古いものから、最終氷期最寒冷期以降のもの、さらには縄文時代の石槍まで、時代によって異なる特徴を持っています。

特に、後期旧石器時代から縄文時代にかけての槍先形の石器は、研究の進展に伴い「ポイント」と呼ばれることもあります。これは、初期の尖頭器と比較して、より洗練された形状と加工技術が用いられていることが特徴です。

尖頭器の出現と発達

日本では、尖頭器（特に槍先形尖頭器）は約2万年前から約1万5千年前のナイフ形石器が盛んに使われていた時期に出現しました。その起源は、ナイフ形石器からの発展とも、大陸から伝わったとも言われていますが、まだ解明されていません。

ナイフ形石器が衰退するにつれて、槍先形尖頭器は著しく発達し、その数は大きく増加しました。細石器が多用された時期には一時的に減少しましたが、縄文土器が出現する頃に最盛期を迎えます。このため、細石器段階以前のものを初期尖頭器、以降を発達期の尖頭器と区別することもあります。初期の尖頭器は比較的小さく、調整も多様でしたが、発達期のものは大型化し、両面調整が主流となりました。また、発達期には有舌（有茎）尖頭器も現れるようになります。縄文時代の槍先形尖頭器は、この発達期尖頭器の後半部分に相当します。

国内最大級の尖頭器の発見

矢板市教育委員会による調査では、旧石器時代から縄文時代早期（約1万2千年から1万5千年前）のものと見られる、国内最大級の長さ14cmにも及ぶ尖頭器とその製作場所が発見されました。この発見は、当時の石器製作技術や社会構造を理解する上で非常に貴重な資料となっています。

尖頭器の分類と編年

尖頭器の分類は、形態（木葉形、半月形、有舌、有肩など）や調整部位（周辺調整、片面調整、両面調整）によって行われてきましたが、まだ明確な型式分類は確立されていません。芹沢長介は有舌尖頭器を形態上の差異から4群に分類し、その変遷過程を示しましたが、その後の研究により、若干の修正が必要とされています。しかし、一般的に、細長くて舌部の返しが未発達なものから、基部の返しが鋭くなったものへと変化したと考えられています。

動物相の変化と尖頭器の消長

更新世末から完新世初頭にかけて、日本を含む北アメリカ大陸やアジア大陸では、尖頭器が大きく発達しました。これは、マンモスやバイソンなどの大型獣を狩るために、投げ槍の先端に取り付けられる尖頭器が必要とされたためです。

日本では、当初は大型獣を対象としていましたが、海進によって大陸から切り離され、大型獣が絶滅したため、イノシシやニホンジカなどが主な狩猟対象となりました。これらの動物は嗅覚が鋭く、動きも素早いため、手持ちの槍よりも投げ槍が有効であり、有舌尖頭器が急増したと考えられています。その後、弓矢の発明とともに、タヌキやウサギなどの小動物も狩猟対象となり、投げ槍の役割は弓矢に取って代わられ、槍先形尖頭器は次第に使われなくなりました。一方で、縄文時代前期以降は、採集や漁撈が充実し、定住生活が進むにつれて、落とし穴を利用する狩猟も増加しました。

まとめ

尖頭器は、旧石器時代から縄文時代にかけて、狩猟における重要な道具として用いられました。その形状や製作技術の変化は、当時の人々の生活様式や狩猟技術の変遷を反映しています。尖頭器の研究は、人類の歴史を理解する上で不可欠な要素と言えるでしょう。

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