クーガー・エース

クーガー・エース (COUGAR ACE)

クーガー・エースは、日本の商船三井が所有する自動車運搬船で、1993年に建造され、シンガポールに登録されている。総トン数は55,328トンで、主に日本から北米への完成車輸送を目的としている。船名は動物のクーガーに由来し、その印象的な名称とデザインで知られている。

海難事故の発生

この船は、2006年7月24日、日本時間午後5時頃に過酷な海域で傾斜を伴う事故を起こした。アリューシャン列島の南から約370キロメートル離れた場所で、船体が左側に大きく60度以上も傾き、航行することができなくなった。この事態を受けて、アメリカ沿岸警備隊への救助要請が行われ、日本の商船三井本社には迅速な対応を図るための対策本部が設置された。

乗組員は23名（シンガポール人2名、ミャンマー人8名、フィリピン人13名）で、その中の1名が足を負傷したものの、他の乗組員は無事で船内での待機を余儀なくされた。日本時間の7月24日午後3時までに、アメリカ沿岸警備隊及びアメリカ空軍のヘリコプターによる救助が行われ、無事にアダック島に移送された。

復旧作業の進展

事故後、船体の復旧作業が始まった。7月28日には、アメリカ沿岸警備隊、アラスカ州環境保護局、商船三井の三者による合同対策本部が設置され、無人状態の船体は安定した状態で浮き上がっていた。風の影響で船はアリューシャン列島から約210キロメートルへと流されていたが、巡視船とタグボートが状況を監視し続けた。

7月31日には技術者がヘリコプターで船上に降りたが、作業中の事故により1名が不幸にも死亡した。その後、悪天候のために作業が中断され、8月5日に穏やかなベーリング海へと曳航され、8日からはダッチハーバー港で立て直し作業が始まった。15日には船体の姿勢がほぼ回復し、浸水の危険もなくなった。

その後、発電機の不具合から自力航行は不可能となり、曳航による移動が決定された。9月2日にはダッチハーバーを出港し、12日にオレゴン州のポートランド港に到着。同地での荷役後、本格的な復旧作業が行われた。

事故の原因

事故の原因は、バラスト水の調整作業中に誤って過剰に海水を排出してしまったことに起因している。これにより復原力が不足してしまい、強い波によって船体は急速に横転してしまった。このようにして、クーガー・エースは不運な事故を経験することになった。

積載車両

事故当時、クーガー・エースには、アメリカ行きの新車が搭載されており、その中にはマツダ製の車が4,703台（MAZDA3及びCX-7）と、いすゞ自動車製の110台（エルフ）が含まれていた。損傷が少ない車両もあったものの、イメージダウンを懸念したマツダおよびいすゞは全ての車両を廃棄する決定を下した。

まとめ

クーガー・エースの事故は、海運業界における安全対策の重要性を再認識させる出来事となった。商船三井はその後も運航の安全性を高めるための努力を続けている。

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