クール・ビズ

クールビズとは

クールビズ（COOL BIZ）は、日本において夏季に環境省が中心となって推進する、地球温暖化対策を目的とした衣服の軽装化キャンペーン、またはその軽装スタイルを指す言葉です。ビジネスシーンにおけるカジュアル化の流れとも深く関連しており、対義語として秋冬版の「ウォームビズ」があります。

クールビズの概要

2005年、当時の環境大臣であった小池百合子氏が、小泉純一郎首相からのアドバイスを受け、「夏場の軽装による冷房節約」を提唱しました。環境省主導のもと、ネクタイや上着を着用しない「ノーネクタイ・ノージャケット」スタイルを推奨し、夏季の室温28度以上に対応できる軽装を呼びかけました。

「クールビズ」という名称は、環境省が一般公募で選定したもので、涼しさや格好良さを意味する「クール（COOL）」と、ビジネスの略語である「ビズ（BIZ）」を組み合わせた造語です。2005年の新語・流行語大賞トップテンにも選ばれ、広く認知されるようになりました。

クールビズの普及と影響

当初、クールビズは紳士服業界にとって新たなビジネスチャンスと捉えられ、ネクタイなしでもだらしなく見えないシャツや、沖縄の伝統的なシャツであるかりゆしウェアなどが販売されました。当初は定着が危ぶまれましたが、2007年の調査では認知度が9割を超え、約半数が実践するまでになりました。

日本では賛否両論があるものの、海外でも日本のクールビズを参考に同様のキャンペーンを行う政府が増え、2008年には国際連合も「クールUN」を実施しました。

環境省が想定する実施期間は6月1日から9月30日までの4ヶ月間ですが、2011年には東日本大震災の影響による電力不足を考慮し、5月1日から実施されました。2012年からは、さらに軽装を推奨する「スーパークールビズ」が打ち出されています。

環境省の服装規定

環境省では、服装の可否について具体的な基準を設けています。

○: 可
(○): 可だが徹底されていない
△: TPOに応じた節度ある着用に限り可
×: 原則不可

具体的な衣装を定めるのではなく、事務所衛生基準規則に基づく室温28度に対応できる軽装全般を推奨しています。

経済産業省とクールビズテック

経済産業省は2011年に「クールビズテック」として、通気性や断熱性に優れた高機能繊維製品を紹介しました。摂氏28度での快適な過ごし方を目標としていますが、環境省の指針では、暑さ指数摂氏28度は熱中症への厳重警戒が必要とされています。

自治体や人事院、防衛省の対応

自治体によっては、アロハシャツなど地域特有の服装を推奨する役所もあり、地域イメージ向上に役立てています。人事院は国家公務員採用試験の案内で、官庁訪問時の軽装を許可しています。防衛省も自衛隊法の品位保持義務に抵触しない範囲でクールビズを推奨しています。

ただし、これらはあくまで日本国内での基準であり、海外出張などでは状況に応じた服装が求められます。

実施期間の詳細

環境省の想定期間は6月1日から9月30日ですが、開始や終了時期は企業や官公庁によって異なります。2011年には東日本大震災の影響で、5月1日から10月31日までの半年間実施されました。

2020年3月、環境省はクールビズの実施期間を廃止し、2021年4月からは各自が気温に応じて服装を決めるよう呼びかけました。

効果の試算と推計

環境省の調査

環境省の調査によると、2005年にはクールビズの認知度が95.8%に達し、冷房温度を高めに設定した就業者の割合は32.7%でした。これにより、二酸化炭素排出量が約46万トン削減されたと推計されています。

2006年には認知度が96.1%に上昇し、冷房温度を高めに設定した企業は43.2%でした。この結果、二酸化炭素排出量は約114万トン削減されたと推計されています。

内閣府の調査

内閣府の調査では、クールビズを「詳しく知っている」または「聞いたことがある」と回答した人は91.2%に達し、この習慣に賛同する人は83.5%でした。実践者は46.6%で、2年前から大幅に増加しました。

経済波及効果

経済産業省の分析では、クールビズ関連品目の消費が増加し、国内生産に約180億円の波及効果があったとされています。また、第一生命経済研究所は、衣類の買い換えによる経済効果を1,000億円以上と試算しました。

作業効率への影響

日本建築学会の調査によると、室温が1度上がるごとに作業効率が2%低下し、冷房温度を28度に設定した場合、軽装のみではオフィス1平方メートルあたり約1万3000円の損失が出るとの試算があります。

クールビズへの反応

2005年以前にも、半袖の背広「省エネルック」が提唱されましたが、普及には至りませんでした。クールビズは「新・省エネルック」とも呼ばれましたが、2007年の調査では多くの人が認知し、実践するようになりました。

実業界・企業の反応

トヨタ自動車は取引先に対し、来訪時のノー上着・ノーネクタイを要請しました。一方で、ネクタイ業界からは売り上げ減少への懸念の声が上がりました。

朝日新聞は、クールビズを批判するコラムを掲載し、横並び思考を批判しました。しかし、近年では企業が面接時に軽装を推奨するようになっています。

放送局の反応

テレビ局では、当初は報道番組のキャスターや記者がスーツ姿でしたが、徐々にクールビズが浸透しました。西日本放送では、期間中の男性アナウンサーがノーネクタイで出演しています。2011年の東日本大震災以降、在京キー局でもクールビズが導入され始めました。

役所職員の反応

環境省では、当初冷房設定を28度にしたところ、室温が30度を超える部署が続出し、労働環境が問題視されました。兵庫県姫路市では、労働環境を快適にするため、エアコンの設定温度を25度に下げています。

政治家の反応

政治家の反応は様々で、クールビズを推進する一方で、軽装を批判する意見もありました。2007年には、参議院議院運営委員長が本会議・委員会でのネクタイ着用を義務付ける提案をしましたが、各会派から反発を受けました。

巨額の宣伝費

環境省の地球温暖化防止大規模「国民運動」推進事業では、3年間で80億円以上の予算が計上されました。この宣伝費に対して、国民からは疑問の声も上がりました。

日本国外での反響

中国では日本のクールビズを指す言葉として「清涼商務」が使われましたが、定着はしていません。韓国では環境部がクールビズキャンペーンを開始し、ソウル市では半ズボン・サンダルでの勤務も許可されています。イギリスでは労働組合会議がクールビズを提唱しましたが、定着には至っていません。イタリア保健省も雇用主に対し、カジュアルな服装を推奨しています。

2007年にはノーベル平和賞を受賞したラジェンドラ・パチャウリ氏が、クールビズを称賛しました。スペインでは閣僚がネクタイを拒否し、議論を呼びました。国際連合では「クールUN」を実施し、冷房設定を緩めました。

クールビズは、単なる服装の軽装化だけでなく、環境意識の向上や働き方改革にも繋がる重要な取り組みです。今後も、その動向が注目されます。

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