グァルティエロ・ヤコペッティ

グァルティエロ・ヤコペッティ

グァルティエロ・ヤコペッティ（Gualtiero Jacopetti, 1919年9月4日 - 2011年8月17日）は、イタリア出身の映画監督、そして雑誌記者としても活躍した人物です。彼は、世界の様々な文化や風習、あるいは社会のタブーに大胆に切り込んだドキュメンタリー映画、いわゆる「モンド映画」というジャンルを確立したことで広く知られています。

ジャーナリストとしてキャリアをスタートさせたヤコペッティは、雑誌社で主に芸能分野の記事を手がけていました。その後、映画製作の世界に足を踏み入れ、当時イタリアで人気を博していた、夜の街の様子や風俗を描写する一連のドキュメンタリー作品（通称「夜もの」）に制作陣として参加します。

彼の名が世界に知られることとなったのは、1961年に発表された監督作『世界残酷物語』によってです。この作品は、世界各地で見られる、見る者によっては奇妙あるいは野蛮とも映る独特な風習や出来事を集めて紹介するものでした。その内容は大きな衝撃を与え、また一部には演出や誇張が含まれているとの批判も受けましたが、興行的に大成功を収めました。特に、映画の主題歌としてニーノ・オリヴィエロが作曲した「モア」は世界的なヒット曲となり、作品の知名度をさらに高める結果となりました。

『世界残酷物語』の成功を受け、ヤコペッティはその後も同路線で『続・世界残酷物語』や、アフリカ各国の独立前後の混乱を描いた『さらばアフリカ』といった作品を発表し続けます。これらの作品群は、後に「モンド映画」と呼ばれる独自のジャンルを形成し、世界中の映像作家に影響を与えました。彼の作品は、センセーショナルな内容で観客を惹きつける一方で、その倫理的な問題や真実性について、しばしば激しい議論を巻き起こしました。

1974年の『ヤコペッティの大残酷』を最後に、彼は監督としての第一線からは事実上退きました。その後はショッキングな内容の映画のプロデュースに携わったとも言われますが、かつてのような表立った活動は控えめになりました。しかし、2004年にはアメリカで発売された自身の作品のDVDボックスにボーナストラックとして収録されたインタビューに登場し、『世界残酷物語』シリーズの撮影に関する秘話などを語り、健在な姿を見せてファンを喜ばせました。

晩年はローマで静かに暮らしていたヤコペッティは、2011年8月17日、ローマ市内の自宅にて安らかに息を引き取りました。享年91でした。彼の作品は、その衝撃的な内容から賛否が分かれますが、「モンド映画」という強烈な個性を持つジャンルを確立し、世界のドキュメンタリー映画史に独特の足跡を残した功績は大きいと言えるでしょう。彼の作品や手法は、後世の様々な映像作品やサブカルチャーにも影響を与えており、例えば日本の漫画『モジャ公』には彼をモデルにしたキャラクターが登場するなど、その名は今なお記憶されています。

主な監督作品

『世界残酷物語』 Mondo cane （1962年）
『続・世界残酷物語』 Mondo cane 2 （1963年）
『世界女族物語』 La Donna nel mondo （1963年）
『さらばアフリカ』 Africa addio （1966年）
『ヤコペッティの残酷大陸』 Addio zio Tom （1971年）
『ヤコペッティの大残酷』 Mondo candido （1974年）

製作・脚本

『世界の夜』 Il Mondo di Notte （1959年） - 脚本・ナレーション
『ヨーロッパの夜』 Europa di Notte （1960年） - 脚本
『生きる歓び』 Quelle Joie de Vivre （1960年） - 脚本
『グレート・ドライバー』 Fangio （1979年） - 製作

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