グアダレーテ河畔の戦い

グアダレーテ河畔の戦い

グアダレーテ河畔の戦いは711年に現在のスペイン南部で発生した歴史的な戦闘であり、この戦争はウマイヤ朝のアラブ・ベルベル軍と西ゴート王国軍の間で繰り広げられました。この戦いの結果、西ゴート王ロデリックが戦死し、トレドが陥落。これにより西ゴート王国は滅び、イスラームによるイベリア半島征服への第一歩が踏み出されました。

背景

西ゴート王ロデリックの父は、かつての王キンダスウィントの子、デオデウレードです。ロデリックは父が流刑にされた結果、コルドバで育ちました。彼はイベリア南端のバエティカ伯となり、有力貴族の支持を受けてクーデターを起こし、ウィティザ王から王位を奪いました。しかし、ウィティザの死亡は暗殺の可能性が指摘されています。

ロデリックの治世は710年から711年の間とされ、不安定な政権下で権力基盤を固めるのに苦労していました。その影響で、裏切り者が出現する原因にもなります。西ゴート王国の南西部はロデリックが支配していた一方、ウィティザの子アギラ2世は北東部を治理しており、彼らは対立関係にありましたが、ムスリムの侵攻に対してはロデリックが忙殺されていたため、表立った争いには至りませんでした。

発端

711年（712年説もあり）の春、ロデリックはイベリア半島北部のバスク人征伐に出向きました。その頃、ウマイヤ朝の北アフリカ総督ムーサー・イブン・ヌサイルがイベリア半島への大規模な出兵を決定。婷まれたベルベル人部将ターリク・イブン・ズィヤードが、セウタを治める西ゴート貴族ユリアヌスの助けを借りてジブラルタル海峡を渡りました。

ターリクは711年4月29日、イベリア半島に上陸。この岩山は後に「ジャバル・アル・ターリク」と呼ばれ、ジブラルタルの語源となります。ターリクは上陸後、すぐに墨を待ちました。ロデリックはムスリム軍の侵攻を見て、バスク討伐軍を引き返させて南下を開始しました。

戦闘の推移

グアダレーテ河畔の戦いの日付については、長らく711年説が主流でしたが、754年の年代記では712年としており、さらにはアラブ側の史料が7月25日または26日として記録しています。アメリカの歴史学者デービッド・ルイスは711年7月19日と主張しています。

ターリクのムスリム軍は最初約7000人のベルベル騎兵から成り、後にムーサーが更に5000人の兵を送ったとされています。総勢約1万2000人中、主要な部隊はベルベル人で、アラブ人は300人ほどでした。対する西ゴート軍は、古くからの戦乱を経験していないため、戦闘に熟練した軍隊ではありませんでした。

戦闘

711年7月下旬、ロデリック率いる西ゴート軍はグアダレーテ川近くでムスリム軍と接触。ロデリックは全軍に総攻撃を命じますが、期待された支援がなく、中央軍は孤立。ターリクが騎兵による攻撃を仕掛けると、西ゴート軍は包囲され、ロデリックは戦場で命を落としました。

ロデリックの死は、士気を低下させる要因となり、西ゴート軍の敗走が始まります。多くの兵士がグアダレーテ川で溺死する中で、ロデリックの馬と片方のブーツのみが見つかりました。

その後

戦いに勝利したウマイヤ朝はトレドを陥落させ、多くの西ゴート貴族を処刑。ムーサーはライの軍勢と共にイベリア半島を征服し、718年には西ゴート奴の残党が滅びました。この年、アストゥリアス王国の建国につながる出来事が起こり、レコンキスタの動きが始まります。

伝説

ロデリックに関する伝承に「セウタ総督ユリアヌスの娘の伝説」があります。ロデリックがユリアヌスの娘フロリンダを陵辱し、ユリアヌスがムスリム軍に復讐を求めたという物語です。この伝説は後の文学やオペラでも繰り返し語られています。

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