グティ人

グティ人：古代メソポタミアを揺るがした謎の遊牧民

グティ人（グティじん、GutiまたはQuti）は、古代西アジア、現在のイランに位置するザグロス山脈周辺に居住していたとされる遊牧民です。彼らは、古代メソポタミアのアッカド王朝末期にメソポタミアへ侵入したことで歴史に名を残しました。

歴史

ザグロス山脈方面からメソポタミアへ侵入したとされていますが、グティ人の実態については、残念ながらほとんど解明されていません。イラン高原南西部には「グティウム」と呼ばれる地域があり、アッカド王たちが度々遠征を行った記録が残っていますが、これがグティ人と関連があるのかどうかは定かではありません。

後世の伝説では、アッカド王ナラム・シンが神の怒りを買い、その神罰としてグティ人が差し向けられたという説や、ナラム・シンとグティ人の戦いを描いた物語も存在します。しかし、グティ人の侵入が本格化したのは、実際にはナラム・シンの次の王、シャル・カリ・シャッリの時代からでした。「誰が王で、誰が王でなかったか」とシュメール王名表に記された時代、グティ人はメソポタミアで勢力を拡大し、支配権を握ったと考えられています。同王名表によれば、その支配は125年間にも及んだとされています。

紀元前2100年頃、ウルクの王ウトゥ・ヘガルが対グティ戦争を起こし、エンニギの戦いでグティ王ティリガンを破り、グティ人をメソポタミアから駆逐したと伝えられています。しかし、近年の研究では、グティ人は単一の政治集団ではなく、その勢力範囲も非常に限定的だったと推定されています。ウトゥ・ヘガル王によるグティ人撃退という出来事も、後代の物語にのみ見られるものであり、同時代の史料からは確認されていません。

古代の人々も現代の私たちと同じように、独自の歴史観を持ち、それに基づいて歴史を記述しました。シュメール人やアッカド人たちは、アッカド王朝末期の混乱の原因を、グティ人という蛮族の侵入にあると考えました。現代の学者は、このようなメソポタミアの人々の見方を「蛮族侵入史観」と呼ぶことがあります。しかし、現在では、アッカド王朝末期の政治的混乱は、メソポタミア各地の都市の自律的な発展による社会変化が大きく影響していると考えられており、グティ人による「混乱」を過大評価すべきではないという見解が一般的になりつつあります。

蛮族としてのグティ人

グティ人が支配した時代は、シュメール人やアッカド人にとって悪夢の時代として記憶され、グティ人は「山の竜」とまで呼ばれ、忌み嫌われました。ウトゥ・ヘガルによって破られた後、彼らがどうなったのかは全く分かっていませんが、グティ人の名は蛮族を意味する言葉として、長くメソポタミアに残り続けました。

シュメール王名表に記載されているグティ王の一覧

イムタ
インキシュシュ
サルラガブ
シュルメ
エルルメシュ
イニムバケシュ
イゲシャウシュ
イアルラガブ
イバテ
イアルラ
クルム
アピキン
ラエラブム
イラルム
イブラヌム
ハブルム
プズル・シン
イアルラガンダ
ティリガン

参考文献

(元の資料の出典をここに記載)

関連項目

* en:Gutian dynasty of Sumer

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