グヌン・ムル国立公園

グヌン・ムル国立公園は、マレーシア領ボルネオ島北部に位置し、ムル山の山域を保護するために設立された自然公園です。2000年には、その比類なき自然の価値が認められ、ユネスコの世界遺産（自然遺産）に登録されました。「グヌン」とは現地語で「山」を意味するため、ムル山国立公園とも呼ばれることがあります。また、グノン・ムル国立公園という表記も用いられます。

特徴

公園の中心となるムル山は、標高2,377mを誇り、山頂を含めた一帯が特徴的なカルスト地形を形成しています。この地形の地下には、総延長約175kmにも及ぶクリアウォーター洞窟系や、約50kmのベナラット洞窟系をはじめとする巨大な洞窟群が広がっています。

これらの洞窟は、コウモリ、特にヒダクチオヒキコウモリや、アナツバメ、主にヒマラヤアナツバメ属の生息地となっています。中でもディア・ケイブと呼ばれる洞窟は、世界最大級の空洞の一つであり、夕暮れ時には数百万匹ものコウモリが一斉に飛び立つ壮観な光景を目にすることができます。

地表には、ペナン族の狩猟対象となるイノシシをはじめ、多種多様な動植物が生息しています。ボルネオ島のジャングルは、アマゾンやアフリカのジャングルよりも古いと考えられており、特にヤシの種類の豊富さが際立っています。確認されているだけで、100種類以上のヤシがこの地で生育しています。

世界遺産登録基準

グヌン・ムル国立公園が世界遺産に登録された背景には、以下の登録基準を満たしていることが挙げられます。

(7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。：カルスト地形と巨大な洞窟群が織りなす景観は、他に類を見ない自然美を誇ります。
(8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。：この地域の地形は、地球の地質学的歴史における重要な過程を示すものです。
(9) 陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。：多様な動植物が生息し、生態系の進化と発達を理解する上で重要な場所です。
(10) 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。：絶滅危惧種を含む、多様な生物の生息地として重要な役割を果たしています。

保護への取り組み

これらの特徴が示すように、グヌン・ムル国立公園は、その自然の価値を保護するための厳格な管理体制下に置かれています。生物多様性の保全と自然環境の保護は、この国立公園の最も重要な使命となっています。

関連事項

* パフィオペディルム・サンデリアヌム：この地域に自生する、希少なランの一種

グヌン・ムル国立公園は、その壮大な自然景観と生態学的価値から、世界中の研究者や自然愛好家にとって重要な場所となっています。この場所を訪れる人々は、太古から続く自然の驚異を目の当たりにし、地球の宝であるこの地域を保護することの重要性を改めて認識することでしょう。

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