グラウベル・ローシャ

グラウベル・ローシャ：ブラジル映画の革命家

グラウベル・ローシャ（1938年-1981年）は、ブラジル映画史に燦然と輝く巨匠の一人です。バイーア州ヴィトリア・ダ・コンキスタに生まれた彼は、幼少期から演劇や映画に深い関心を抱き、地方新聞で映画批評を執筆するなど、早くから才能を開花させました。法律学校に通いながらも、映画制作への情熱を燃やし続け、1959年には短編映画『Pátio』を発表。その後、大学を中退し、ジャーナリスト、映画作家としての道を歩むことを決意します。

ローシャは、ブラジル映画のニューウェーブ運動であるシネマ・ノーヴォを牽引した中心人物として知られています。1962年の長編デビュー作『バラベント』以降、『黒い神と白い悪魔』（1964年）、『狂乱の大地』（1967年）、『アントニオ・ダス・モルテス』（1969年）など、数々の傑作を発表。カンヌ国際[[映画祭]]やロカルノ国際[[映画祭]]など、世界的な映画祭で高い評価を獲得しました。彼の作品は、ブラジルの政治的・社会的問題を鋭くえぐり出し、神秘主義やフォークロアといった要素と見事に融合させた独特のスタイルで高く評価されました。

特に『狂乱の大地』は、政治的混乱に揺れるブラジルの社会状況を、鮮烈な映像と象徴的な演出で描き出し、国際的な注目を集めました。また、『アントニオ・ダス・モルテス』は、カンヌ国際[[映画祭]]監督賞を受賞するなど、ローシャの才能を世界に知らしめる作品となりました。

ローシャは、映画制作活動と並行して、精力的な批評活動も展開しました。彼は、自身の映画に対する明確な思想を持ち、シネマ・ノーヴォを「ブラジルの国際的な大衆映画のクリエイティブな合成」と位置づけていました。また、芸術家としての強い信念を持ち、「芸術とは才能だけでなく、勇気だ」という言葉を遺しました。

彼の活動は、ブラジルの軍事独裁政権下においても衰えることはありませんでした。しかし、政治的な理由から、1971年にはスペイン、チリ、ポルトガルなど、さまざまな国に亡命生活を余儀なくされます。亡命先においても、彼は精力的に映画制作を続け、『O Leão de Sete Cabeças』（1970年）、『切られた首』（1970年）、『História do Brasil』（1973年）など、多くの作品を世に送り出しました。

ローシャは、フランスのヌーヴェルヴァーグの巨匠、ジャン＝リュック・ゴダール監督の『東風』（1969年）にも出演しています。この作品は、イタリアで撮影された極左の西部劇で、ローシャをはじめ、マルコ・フェレーリ、ジャン・マリア・ヴォロンテといった錚々たるメンバーが出演しています。このことからも、ローシャが国際的な映画界でいかに重要な存在であったかがわかります。

晩年は肺の感染症によりリスボンで治療を受け、リオデジャネイロへの帰国を目前に1981年、43歳の若さでこの世を去りました。

ローシャは、数々の名作を残しただけでなく、ブラジル映画、ひいては世界映画史に大きな足跡を残した、まさに革命的な映画監督でした。彼の作品は、現在もなお、世界中の映画愛好家から高い評価を受け、その影響は計り知れません。彼の思想と作品は、これからも多くの人々を魅了し続け、映画界に大きな刺激を与え続けるでしょう。

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