グラビア印刷

グラビア印刷

グラビア印刷は、凹版印刷に分類される技術で、特に微細な濃淡の階調を豊かに表現できる点が大きな特徴です。そのため、写真のような連続的なトーンを持つ画像の印刷に非常に適しています。

概要

この印刷方法は、一般的にオフセット印刷やフレキソ印刷と同じく、高速で回転する印刷機を使用して行われます。印刷に必要なイメージは、円筒形の版であるシリンダの表面に直接作製されます。また、グラビア印刷は通常、一枚ずつの紙（枚葉紙）ではなく、巻き取られた状態の紙やフィルム（ロール紙）に連続して印刷することを前提としています。

なお、雑誌でよく見かける「グラビア」と称されるページは、かつてグラビア印刷が芸術的な写真印刷の代表格であった時代の名残であり、現代ではそのほとんどがオフセット印刷によって製作されています。

語源

英語ではグラビア印刷を「rotogravure（ロートグラビア）」、あるいはそれを短縮した「roto」や「gravure（グラヴューア）」と呼びます。これらの名称は、ドイツの印刷会社「Rotogravur」に由来し、その社名が印刷技術を指す普通名詞として定着しました。この「Rotogravur」という社名は、「Rotophot」社と「Deutsche Photogravur」社の合併によって生まれた合成語で、それぞれの構成要素を遡ると「roto」（回転）、「photo」（写真）、そしてフランス語の「gravure」（彫刻）という意味が含まれており、この印刷技術の本質を表しています。

特徴的な要素

グラビア印刷の技術的な特徴は、主に以下の点に集約されます。

シリンダ（版胴）

グラビア印刷における版の役割を果たすシリンダは、通常、鋼管の表面に約80から100マイクロメートルという厚さで銅めっきが施されており、この銅層の上に印刷イメージが製版されます。一度使用された銅めっき層は剥がしてリサイクルされ、再びめっきや研磨を経て再利用されます。

製版技術

製版方法には、化学薬品による腐食作用を利用する伝統的な写真製版法がありますが、近年では腐食工程を経ずに版を作る方法が主流となっています。これは、先端にダイヤモンドやレーザーを備えた機械（電子彫刻機）を用いて、シリンダ表面に直接印刷イメージを彫刻していく方法です。

版面（セル）

グラビア版シリンダに彫り込まれた印刷イメージは、非常に小さな凹みによって構成されています。これらの凹みは「セル」と呼ばれ、印刷時にはこのセルにインクが溜まります。インクはその後、圧力がかかることで紙などの印刷媒体に転写されます。グラビア印刷では、このセルに保持されるインクの量を精密にコントロールすることで、色の濃淡を表現します。

セルの形状や構造によるインク量制御の方法にはいくつか種類があります。

コンベンショナル法: セルの「深さ」を調整することでインク量を制御し、濃淡を表現します。
網グラビア法: セルの「深さ」と「大きさ（面積）」の両方を組み合わせることでインク量を制御します。
電子彫刻法: こちらもセルの「深さ」と「大きさ」の両方を精密に制御してインク量を調整します。

これらの技術により、インクの転写量を細かく変化させ、豊かな階調や微妙な濃淡の表現を可能にしています。

利点と活用分野

グラビア印刷の最大の利点は、セルの深さや大きさを調整してインク量をきめ細かく制御できることによる、写真のような連続階調画像の優れた再現性にあります。特に、網グラビア法においては、版の互換性からオフセット印刷機で校正刷りを作成できる点や、良好な調子再現性が利点として挙げられますが、近年のオフセット印刷技術の向上により、かつての主要な用途であった雑誌のグラビアページなどではオフセット印刷が主流となっています。

また、シリンダ表面に施されるクロムめっきにより、版が非常に高い耐久性を持つため、高速な印刷機と組み合わせることで大量部数の印刷を効率的に行えます。これは、グラビア印刷が経済的なメリットを持つ大きな要因です。グラビアインキはオフセットインキと比較して濃度が高い傾向がありますが、標準的なCMY（シアン、マゼンタ、イエロー）の色域から外れることがあるため、色再現性を高めるために特色インキを併用することが一般的です。

グラビア印刷は、紙や薄紙、フィルム、金属箔、紙コップなど多様な素材に適用可能です。特に、菓子、食品、洗剤、タバコといった商品のパッケージ印刷において広く利用されており、その高い写真再現性と生産能力がこれらの用途に適していると言えます。

グラビア印刷機の構成と流れ

輪転式のグラビア印刷機は、通常、最終的な印刷イメージに必要な色の数だけ印刷ユニットを備えています。各カラーユニットは、主に以下の5つの基本的な要素で構成されます。

グラビア版シリンダ（版胴）
インク溜め（インキパン）
ドクターブレード（余分なインクを掻き取る刃）
圧着ローラー（圧胴）
乾燥機

印刷は、各ユニットで以下の一連の工程を繰り返すことで進行します。

1. 版シリンダの一部がインク溜めに浸され、シリンダ表面のセルにインクが充填されます。
2. 回転によってインク溜めから引き上げられたシリンダの表面が、ドクターブレードによってこすられます。これにより、印刷イメージではない平滑な部分から余分なインクが正確に除去され、セル内のインクだけが残ります。
3. 紙が圧着ローラーとグラビア版シリンダの間を通過します。圧着ローラーが紙をシリンダに押し付けることで、セル内のインクが紙へと転写されます。圧着ローラーは、インクの転写を効率的かつ均一にする役割を担います。
4. インクが転写された紙は乾燥機を通過します。これは、次の色のインクを重ねる前に、現在のインク層を完全に乾燥させるためです。
5. 乾燥後、紙は次の色の印刷ユニットへと送られ、同様の工程が繰り返されて多色刷りが完成します。

このように、グラビア印刷は高度な技術と工程を経て、美しい写真画像や多様なデザインを様々な素材に印刷することを可能にしています。

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