グラフィティ (Palm)

Graffitiは、かつてPalm社が開発した文字入力システムであり、同社のPDAであるPalmシリーズに搭載されていました。このシステムは、手書き文字認識の技術を応用しており、独自のジェスチャーを用いることで、効率的な文字入力を可能にしたことが特徴です。

もともとGraffitiは、Palm社が世界初のPDAであるApple社のNewton向けに、サードパーティーのアプリケーションとして開発したのが始まりでした。このアプリケーションが非常に人気を博したことがきっかけとなり、Palm社は自社でPDAハードウェアの開発に乗り出し、その際にGraffitiも標準搭載されることになりました。この経緯からも、GraffitiがPDAの文字入力において重要な役割を果たしていたことがわかります。

Graffitiの最大の特徴は、アルファベットや数字を簡略化されたジェスチャーで入力できる点です。例えば、「A」を入力するには「∧」のようなジェスチャーを、「B」を入力するには「β」のようなジェスチャーを、それぞれ一筆で書くことで入力できます。これらのジェスチャーは、アルファベットをベースにしつつも、よりシンプルで書きやすい形に工夫されており、一般的な手書き文字認識に比べて処理が軽く、高速な入力を実現しました。また、ユーザーはこれらのジェスチャーを覚えることで、キーボードを使用するよりもスムーズに文字を入力することが可能になりました。

Graffitiの入力画面は、スタイラスペンを使用することを前提としており、画面は左右に分割されています。左側にはアルファベットを入力するための領域が、右側には数字を入力するための領域が設けられています。また、「／」のジェスチャーに続けてアルファベットを入力することで、特定のコマンドを実行することもできました。この仕組みにより、単なる文字入力だけでなく、システム操作もGraffitiを通じて行うことができました。

現在、Graffitiの権利はACCESS社が保有しており、同社はAndroid向けのGraffitiアプリを販売しています。これにより、かつてPalmユーザーに愛されたGraffitiを、現代のスマートフォンでも利用できるようになりました。Graffitiは、その独特の入力方法と高い効率性から、多くのユーザーに支持されており、今でも根強い人気を誇っています。PDAの歴史を語る上で、Graffitiは欠かせない存在であり、その革新的なアプローチは、後世の文字入力システムにも大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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