グランドスラム (爆弾)

グランドスラム：第二次世界大戦の巨大爆弾

グランドスラムは、第二次世界大戦中にイギリス空軍が使用した超大型爆弾です。その重量は約9.9トンにもなり、当時としては他に類を見ないほどの巨大さを誇りました。この爆弾は、巨大な建造物や堅牢な構築物を破壊するために開発され、小型爆弾では効果が期待できない目標に対して威力を発揮しました。

開発の経緯

グランドスラムの開発は、イギリスの航空エンジニア、バーンズ・ウォリスの構想から始まりました。彼は開戦当初から、地震爆弾と呼ばれる爆弾のアイデアを持っていましたが、当時はそれを搭載できる爆撃機が存在しなかったため、一旦設計を保留しました。その後、5トン級のトールボーイが開発され、その有効性が実証されたことから、ウォーリスはトールボーイをさらにスケールアップしたグランドスラムの開発に着手しました。

グランドスラムの設計は空力を重視し、長い尾部にはフィンが取り付けられました。このフィンは爆弾を回転させることで安定性と命中精度を高める役割を果たし、トールボーイから得られた知見が生かされました。

構造

グランドスラムは、目標の障害物を貫徹する際に爆発しないよう、コンクリート型でサンドモールド鋳造された高張力鋼の外殻を持っていました。内部にはトーペックスという炸薬が用いられ、熱く溶融した状態で注入されました。製造工程は非常に複雑で、一つ一つの爆弾に膨大な材料と人手が必要なため、非常に高価なものとなりました。

戦歴

グランドスラムは、アブロ ランカスター B.I スペシャル爆撃機に搭載され、主に橋梁やバンカーなどの戦略目標に使用されました。1945年3月14日には、第617飛行中隊によってビーレフェルトのシルデッシャー鉄道陸橋が破壊され、その威力が実証されました。また、ブレーメン近くのバレンティンブンカーにも使用され、4-7mのコンクリートを貫通する威力を見せました。

終戦までに41発のグランドスラムが投下され、橋梁や陸橋、Uボートシェルターなどに大きな被害を与えました。アーサー・ハリス大将は、グランドスラムについて「原子爆弾の登場までは最も破壊力を持つ兵器」と評価しています。

戦後、ハンドレページ ヴィクター爆撃機に搭載される計画もありましたが、実現には至りませんでした。アメリカ軍も同様のコンセプトで、より大型のT-12クラウドメーカーを開発していましたが、終戦までに間に合いませんでした。第617中隊は対日戦にも投入が決定しており、九州と本州の連絡を遮断する攻撃に使用される予定でしたが、日本の降伏により中止されました。

性能諸元

長さ: 7.70m
尾部: 4.11m
直径: 1.17m
弾頭: 4,144kg
炸薬: Torpex D1
使用弾数: 41発

関連項目

トールボーイ
MOAB（大規模爆風爆弾兵器）

グランドスラムは、第二次世界大戦における技術力の粋を集めた巨大爆弾であり、その開発と運用は、航空戦の歴史において特筆すべき出来事と言えるでしょう。

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