グラン・トゥーリスモ (アルバム)

カーディガンズ『グラン・トゥーリスモ』：革新と実験が織りなす音世界

カーディガンズの4thアルバム『グラン・トゥーリスモ』は、1998年に発表され、バンドにとって重要な転換期を象徴する作品となりました。先行発売された日本ではもちろんのこと、世界中で大きな反響を呼びました。

制作の背景：新たな挑戦

過去作と同様にトーレ・ヨハンソンがプロデュースを担当しましたが、レコーディングは彼の新しいスタジオ、カントリー・ヘルで行われました。これまでアナログ録音を主体としていたヨハンソンでしたが、本作ではハードディスクへの直接録音を導入し、よりモダンなサウンドを追求しています。ギター、ベース、ドラムスの一部はアナログ・テープで録音され、温かみのある質感を保ちつつ、デジタル技術との融合が図られました。

バンド自身も新たな音楽性の探求に意欲的でした。ピーター・スヴェンソンは「以前よりもシリアスなアルバム」と語り、ベングド・ラガーバーグは「ドラムスやギターのループを取り入れ、以前のレトロなサウンドとは違うモダンな音になっている」と述べています。ニーナ・パーションも、過去のヒット曲のイメージからの脱却を意識しており、本作が新たなファン層を開拓する可能性を示唆しました。

ワールド・ツアーを前に、マグナス・スヴェニングソンが一時的にバンドを離れるというアクシデントがありましたが、彼は休養し、代わりにThe Arkのラッセ・ユングベリがツアー・ベーシストとして参加しました。

評価と反響

『グラン・トゥーリスモ』は、母国スウェーデンで初のアルバム・チャート1位を獲得し、イギリスでは自身最大のヒット作となりました。全英アルバムチャートには49週にわたってランクインし、最高8位を記録しました。しかし、アメリカではBillboard 200で151位にとどまり、前作に続くトップ100入りはなりませんでした。

音楽評論家の評価は分かれました。オールミュージックのレビューでは、5点満点中2.5点と評価され、従来のユーモアやスタイルが薄れ、代わりにエレクトロニカ風の実験や歪んだギターが加えられた点が指摘されています。

収録曲

1. パラライズド - "Paralyzed"
2. イレイス/リワインド - "Erase/Rewind"
3. エクスプロード - "Explode"
4. スターター - "Starter"
5. ハンギング・アラウンド - "Hanging Around"
6. ハイアー - "Higher"
7. マーヴェル・ヒル - "Marvel Hill"
8. マイ・フェイヴァリット・ゲーム - "My Favorite Game"
9. ドゥ・ユー・ビリーヴ - "Do You Believe"
10. ジャンク・オブ・ザ・ハーツ - "Junk of the Hearts"
11. ニル - "Nil"

これらの楽曲は、ニーナ・パーションの独特なボーカルと、ピーター・スヴェンソンの実験的な作曲が融合し、多様なサウンドスケープを形成しています。

カバー

ドゥ・ユー・ビリーヴ
デフトーンズ - カバー・アルバム『Covers』（2011年）に収録。

参加ミュージシャン

ニーナ・パーション - ボーカル
ピーター・スヴェンソン - ギター
ラッセ・ヨハンソン - キーボード、ギター
マグナス・スヴェニングソン - ベース
* ベングド・ラガーバーグ - ドラムス、パーカッション

アディショナル・ミュージシャンとして、リネット・コヤナ、スティーヴ・キャメロンらがバッキング・ボーカルで参加しています。

『グラン・トゥーリスモ』は、カーディガンズの音楽性を大きく変化させ、新たなファン層を獲得するとともに、賛否両論を巻き起こした問題作でもあります。しかし、その実験精神と革新性は、今日の音楽シーンにおいても高く評価されており、彼らの代表作の一つとして語り継がれています。

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