グラン・ローヴァ物語

グラン・ローヴァ物語

紫堂恭子によるファンタジー漫画作品。

概要

1989年から1993年にかけて月刊漫画雑誌『コミックトム』（潮出版社）にて連載された。中世ヨーロッパ風のファンタジー世界を舞台に、人間の台頭と神秘の終焉を描いている。

『指輪物語』からの影響が色濃く、作中にはそれを彷彿とさせる描写が見られる。また、作者の別作品である『辺境警備』や『東カール・シープホーン村』と世界観を共有しており、登場人物のクロスオーバーも行われている。

単行本は潮出版社から全4巻で発売された後、角川書店から描き下ろし短編を加えた「決定版」が全4巻で発売。さらに2007年にはホーム社漫画文庫から文庫版全2巻が発売されている。

あらすじ

詐欺師として生計を立てるサイアムは、「放浪の賢者」を名乗る風変わりな老人グラン・ローヴァと出会い、行動を共にするようになる。グラン・ローヴァに気に入られたサイアムは、様々な不思議な事件に遭遇していく。そして、伝説の「銀晶球」を巡る騒動に巻き込まれていく。それは、精霊たちによって百年も前から予言されていた世界の変革に関わる大いなる災いの始まりだった。

主な登場人物

サイアム
主人公。飢饉で両親を亡くし、詐欺師として生きていた。偽賢者として貴族から金を巻き上げていた際にグラン・ローヴァと出会い、大きな事件に巻き込まれていく。

グラン・ローヴァ
世界中の賢者が集まるという“東の学舎（フォアサイト）”の中でも最高位の称号「放浪の賢者」を持つ老人。しかし、外見は幼く、言動も子供のように奔放。

イリューシア
美しい少女の姿をしているが、その正体は地底湖に住む大蛇の化身。西にある「千年の門」へ向かう方法を探している。

デシ/ダシ
小型の妖魔「イヌワラシ」の子供。内臓が薬になるとされ闇市で取引されていたところを、サイアムに助けられる。サイアムを「とーちゃん」、グラン・ローヴァを「じーちゃん」と呼んで慕う。

パナケア
常に面衣で顔を隠している謎の男。グラン・ローヴァ一行の行く先々に現れ、サイアムに敵意を向ける。

ディルフィア
精霊たちの都・シーレラデュアに住まう精霊の一人。「預言された人間」こそサイアムだと考えている。

背景世界

本作の舞台となる世界は、神と9人の使徒によって創造された。精霊や聖なる獣もこの時に生まれた。しかし、使徒の一人である「闇」が自分だけの創造を望んだために地に堕ち、地の底で「冥王」を生み出した。それ以降に生まれた生物は闇の影響を受け、人間もその一つとされる。

人間は元々弱い存在だったが、精霊リンフィアから「力あることば」を教えられたことで言葉を覚え、強い影響力を持つようになった。人間が台頭したことで太古の力は失われ、精霊や聖なる獣は住む場所を失い、「千年の門」を通って世界から去りつつある。

物語の鍵となる「銀晶球」は、星の光が地の奥底で凝縮された結晶であり、天地創造の力の名残を持つ。触れた者はその力を得て願いを叶えられるが、その強大な力ゆえに災いを招くことも多い。そのため、銀晶球の管理にはグラン・ローヴァのような無垢な人物が必要となる。

単行本

潮出版社〈希望コミックス〉：全4巻
角川書店〈あすかコミックスDX〉：全4巻（描き下ろし短編収録）
ホーム社〈ホーム社漫画文庫〉：全2巻（追加エピソード、イラストエッセイ、書き下ろし漫画収録）

関連書籍

辺境警備（小学館→角川書店）：本作と共通の背景世界を持つ作品。
* 辺境警備プレミアムブック 永遠の約束（角川書店）：『辺境警備』の画集兼設定集。『グラン・ローヴァ物語』の設定に関する言及も含む。

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