グリッドロック (渋滞)

グリッドロックとは

グリッドロックとは、交通渋滞が極度に悪化し、交差点を含む道路網全体で車両が全く動けなくなる状態を指す、主にアメリカで用いられる専門用語です。語源は、交差点を含む格子状（グリッド）の道路網において、車両が前にも後ろにも進めなくなる状況を表しています。

一般的に、激しい交通渋滞を指す言葉として誤用されることもありますが、本来は、交差点での車両の立ち往生が連鎖的に発生し、交通網全体が機能不全に陥る状態を指します。また、交通分野に限らず、需要が供給を大幅に上回り、身動きが取れないような状況を指す言葉としても用いられます。

グリッドロックの発生原因

一般的なグリッドロックは、交差点の先に十分な空間がないにもかかわらず、信号が青であるために交差点に進入し、その結果、信号が赤になっても交差点から出られなくなることで発生します。この現象が複数の交差点で同時に発生すると、どの車両も進めなくなり、グリッドロックへと発展します。

多くの国では、交差点の先に十分な空間がない場合、交差点内への進入は禁止されています。もし全てのドライバーがこのルールを守れば、グリッドロックは発生しません。しかし、現実には、このルールが守られないことでグリッドロックが発生しています。

また、高速道路の流入ランプと流出ランプの間隔が短い場合にも、グリッドロックが発生することがあります。高速道路本線上の渋滞により、流入車両が本線に合流できず、その結果、流入車両の列が流出車線をふさぎ、流出車両も進めなくなるというものです。

グリッドロックは、ゲーム理論における「囚人のジレンマ」の例として用いられることがあります。これは、個々のドライバーが自身の利益のみを優先して行動した結果、全体としての効率が悪化するという状況を表しています。

グリッドロックの規制

グリッドロックを防止するための規制は、各都市で実施されています。

ニューヨーク市: 交差点内に「ボックスジャンクション」を設け、このボックスを塞いだドライバーには罰金が科せられます。当初は、交通違反の分類から「ボックスを塞ぐ」という項目を削除することで、より多くの違反切符を発行できるようにしようとしましたが、違反車両を停止させる必要があるため、変更に至っていません。
バージニアビーチ: 海岸沿いの道路の全ての交差点に「ボックスを塞ぐな」という標識が設置され、違反者には罰金が科せられます。
テキサス州: オースティンでは「ボックスを塞ぐな」運動が、サンアントニオでも同様の取り組みが行われています。

グリッドロックの影響

グリッドロックの最も明らかな影響は、運転者の不満と旅行時間の増大です。しかし、都市部で発生した場合、アーバンキャニオン効果によって騒音や大気汚染などの公害が悪化するという影響もあります。また、緊急車両の通行を妨げ、人命に関わる事態を引き起こす可能性もあります。

グリッドロックの防止

グリッドロックを防止するためには、交通計測システムの導入が有効です。このシステムは、ネットワーク内に入ることができる車両数を制限し、過剰な車両の流入を防ぎます。具体的には、交通信号や警告表示によって当該区間への進入を規制したり、公共交通機関の利用を促したりする方法があります。この方法は、スイスのチューリッヒで採用されています。

グリッドロックの歴史

「グリッドロック」という言葉は、1970年代初頭のニューヨーク市で生まれたとされています。IEEEの1971年の出版物に異なる文脈で登場したのが最初とみられています。新聞に初めて登場したのは、1980年のニューヨーク市交通ストライキの時でした。当時、ニューヨーク市運輸局の技術者だったサム・シュワルツがこの用語を使い始めました。彼は、同僚に緊急時にブロードウェイへの車両進入を禁止するよう提案しましたが、同僚はグリッドが塞がることを懸念して反対しました。

シュワルツは、1980年に『グリッドロック予防策』を発表しました。また、彼は、1970年代半ばに同僚の交通技術者であるロイ・コッタムが、グリッドロックの責任を問われるのではないかと心配していたことが、この言葉の誕生のきっかけであると述べています。

グリッドロックの事例

グリッドロックは世界各地で発生しており、深刻な交通渋滞を引き起こしています。

中国: 2010年、北京市と河北省張家口市間を結ぶ国道で、約100kmにも及ぶ大規模な渋滞が発生しました。この渋滞は、当時世界最悪の渋滞と考えられており、ドライバーの中には5日間も車の中で過ごした人もいました。この渋滞は、道路の構造と石炭を運ぶトラックの集中が原因でした。ニューヨーク・タイムズはこの出来事を「2010年中国大グリッドロック」と呼んでいます。
ブラジル: サンパウロでは、日常的な渋滞が世界最悪レベルであるとされています。2014年には、合計約344kmにも及ぶ渋滞が観測されました。
フランス: 1980年には、パリとリヨンを結ぶ高速道路で、約175kmにも及ぶ渋滞が発生し、当時世界最長とされていました。
日本: 2011年の東日本大震災発生時、東京都内の道路で初めてグリッドロックが観測されました。これは翌日の4時頃に解消されたとされています。

関連項目

ボックスジャンクション
デッドロック（コンピュータソフトウェアにおける類似概念）
Journal of Transport and Land Use
ラッシュアワー（グリッドロック状態から車両を脱出させるパズルゲーム）

外部リンク

『グリッドロック』 - コトバンク

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