グリング

グリング

グリングは、日本の演劇界において、1997年から2009年末まで活動した劇団です。劇作家・演出家である青木豪が、演劇集団 円の演劇研究所での学びを経て中心となり立ち上げました。その活動期間中、特に人間の内面や日常に潜む機微を丁寧に描き出す作風で知られ、多くの演劇ファンに支持されました。

設立とその歩み

劇団は1997年に旗揚げされ、同年には旗揚げ公演となる『アフター・スクール』を東京芸術劇場で上演しました。初期から東京芸術劇場やアイピット目白など、都内の小劇場を中心に精力的に活動を展開。一貫して、現代社会を生きる人々のリアルな姿や、心の奥底に秘められた感情に焦点を当てた作品を創作し続けました。設立から解散まで、主宰である青木豪の作・演出による公演を中心に活動しました。

特徴的な作風

グリングの演劇の最大の特徴は、綿密な人間観察に基づいたリアリティのある描写です。派手な演出や非日常的な設定に頼ることなく、ごく平凡な日常的な風景の中に潜む登場人物たちの心の揺れや、他人には見せない葛藤を細やかに炙り出しました。会話の応酬や登場人物たちのちょっとした仕草から、その人物が抱える背景や心情が浮かび上がるような作劇は、観る者に深い共感や発見をもたらしました。登場人物たちが抱える悩みや関係性の変化を、ユーモアを交えつつも鋭く描くことで、観客はまるで自分たちの物語を見ているかのような感覚を覚えることができたのです。

主な劇団員

劇団の中心メンバーとしては、主宰の青木豪をはじめ、杉山文雄、中野英樹、萩原利映らが名を連ねていました。これらのメンバーが劇団の創作活動を支え、多くの作品に出演しました。

主な公演活動

約12年間の活動期間中に、グリングは数々の印象的な作品を発表しました。主な公演には以下のようなものがあります。

『アフター・スクール』（1997年、東京芸術劇場）
『光のあと』（1998年、東京芸術劇場）
『昨日・今日・明日』（1999年、アイピット目白）
『イノセント』（2001年、東京芸術劇場）
『3／3　サンブンノサン』（2001年、東京芸術劇場）
『ストリップ』（2002年、『劇』小劇場）
『ヒトガタ』（2003年、スズナリ）
『jam』（2003年、スズナリ）
『旧歌 きゅうか』（2004年、『劇』小劇場）
『ストリップ』（2004年、シアタートップス）
『カリフォルニア』（2005年、シアタートップス）
『海賊』（2005年、スズナリ）
『虹』（2006年、紀伊國屋ホール）
『ヒトガタ』（2007年、シアタートップス）
『Get Back!』（2007年、スズナリ）
『ピース-短編集のような・・・・・』（2008年、スズナリ）
『吸血鬼』（2009年、青山円形劇場）
『Jam』（2009年、東京芸術劇場）

これらの作品は、東京芸術劇場、スズナリ、シアタートップスなど、様々な劇場で上演され、その度に観客や批評家から高い評価を得ました。特に『ヒトガタ』や『ストリップ』などは再演も行われ、劇団の代表作として知られています。

活動休止、そして解散

グリングは、2009年12月23日に東京芸術劇場で上演された公演『Jam』をもって、劇団としての活動に一旦区切りをつけ、活動を休止しました。その後、劇団としての新たな活動は行われず、2014年に正式に解散というかたちをとることとなりました。

劇団グリングの活動は終了しましたが、主宰であった青木豪はその後も劇作家、演出家として様々な団体で精力的に活動を続けており、その創作姿勢は多くの演劇人に影響を与えています。約12年間の活動を通して、グリングは日常の中にある人間のドラマを深く描き出す独自のスタイルを確立し、日本の現代演劇において確かな足跡を残しました。

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