グリーゼ163c

グリーゼ163cは、地球から見てかじき座の方向におよそ49光年の距離に位置する太陽系外惑星です。この惑星は、太陽よりも小さく低温な赤色矮星であるグリーゼ163という恒星の周囲を公転しています。

発見の経緯

この天体は、2012年9月にその存在が確認されました。発見には、チリにあるラ・シヤ天文台に設置されている高精度視線速度系外惑星探査装置（HARPS）を用いた観測データが活用されました。HARPSは、恒星のわずかなふらつき（視線速度の変化）を精密に測定することで、その周囲を公転する惑星の重力的な影響を捉える装置です。グリーゼ163cも、この視線速度法によって検出されました。

特徴

グリーゼ163cは、「スーパー・アース」と呼ばれるタイプの惑星であると考えられています。これは、地球より質量が大きいものの、天王星や海王星のような巨大ガス惑星に比べると質量の小さな岩石惑星や海洋惑星、あるいはミニネプチューンといった分類に属する惑星を指す言葉です。具体的には、グリーゼ163cの質量は地球の約6.8倍であると推定されています。この質量から、地球とは異なる内部構造や大気を持つ可能性があると考えられます。

軌道とハビタブルゾーン

グリーゼ163cは、主星であるグリーゼ163のかなり近い軌道を公転しています。その公転周期は約25.6日と非常に短く、地球が太陽の周りを約365日かけて一周するのに比べると、親星からの距離がかなり近いことがわかります。しかし、主星グリーゼ163が太陽よりも暗い赤色矮星であるため、この比較的近い軌道であっても、惑星が受け取るエネルギー量は地球が太陽から受け取る量と比べて大きく異なります。

重要な点として、グリーゼ163cの軌道は、親星であるグリーゼ163の「ハビタブルゾーン」内に位置する可能性が指摘されています。ハビタブルゾーンとは、惑星の表面に液体の水が安定して存在できる温度範囲にある領域のことです。液体の水は生命の存在に不可欠と考えられているため、ハビタブルゾーン内の惑星は生命居住の可能性を持つ天体として注目されます。

ただし、たとえグリーゼ163cがハビタブルゾーン内にあったとしても、その表面温度は比較的高いと予測されています。現在の推定では、平衡温度は332ケルビン（摂氏およそ59度）程度になる可能性があると考えられています。これは、液体の水が存在できる温度範囲には収まるものの、地球の平均気温と比べるとかなり高温の環境です。

まとめ

グリーゼ163cは、質量が地球の数倍あるスーパー・アースであり、赤色矮星のハビタブルゾーン内に位置する可能性がある太陽系外惑星です。その発見は、HARPSによる高精度な観測技術によって実現しました。予測される表面温度はやや高いものの、液体の水が存在できる環境である可能性も示されており、生命居住の可能性という観点から興味深い研究対象となっています。今後の観測によって、大気の組成など、さらに詳細な情報が得られることが期待されます。

もう一度検索