グルンディッヒ

ドイツ電機メーカー、グルンディッヒ社の興亡史

グルンディッヒ社は、ドイツを代表する家電メーカーとして、かつて世界的にその名を馳せていました。1945年、マックス・グルンディッヒ氏によってニュルンベルクに設立された同社は、1930年創業のラジオ販売店「Fuerth, Grundig & Wurzer(RVF)」を前身として持ちます。第二次世界大戦後のドイツにおいて、急増するラジオ需要を的確に見極め、1947年にはラジオキットの販売を開始。フュルトに建設された工場と管理センターを拠点に、事業を拡大していきました。

1951年には、新工場で初のテレビ生産を開始。テレビの普及はめざましく、グルンディッヒ社は瞬く間にヨーロッパ最大のラジオ生産会社へと成長を遂げます。ニュルンベルク、フランクフルト、カールスルーエなどに部門を展開し、事業規模は拡大の一途を辿りました。1960年には、ドイツ国外への進出も果たし、北アイルランドのベルファストでテープレコーダーの生産を開始。グローバル企業としての地位を確立しつつありました。

1972年には、会社形態をGmbHからAGに変更。長年にわたり、フィリップス社が主要株主として経営に参画していましたが、1993年には経営から撤退。その後、1998年にはバーバリアのコンソーシアムに売却されました。2000年末には、本社をフュルトからニュルンベルクに移転。しかし、2002年秋、銀行からの融資が打ち切られる事態に陥り、2003年4月にはついに破産を宣告されました。

破産後も、グルンディッヒブランドは存続することになります。衛星機器部門はトムソン社に売却されましたが、家庭用インターメディアシステムと民生用電子機器部門は、イギリスのAlba plcとトルコのコチ財閥系のベコ・エレクトロニクスが共同で買収。2007年には、Alba plcが保有する持分をベコ社が取得しました。イギリスでのブランド使用許諾は2010年まで、オーストラリアでは2012年までと期限付きではありましたが、世界各国でグルンディッヒブランドは生き残りました。

アメリカ合衆国では、カリフォルニア州パロアルトのイートン社がグルンディッヒブランド製品の生産・販売を手がけています。スペインではGrupo Vitelcomが携帯電話を「Grundig Mobile」ブランドでライセンス生産。自動車部品メーカーのデルファイ社も、グルンディッヒブランドのラジオを生産しています。2007年には、グルンディッヒ・モバイルからLinux搭載の携帯電話「U900」が発表されるなど、ブランド力は健在でした。

2007年、トルコのコチ財閥がグルンディッヒブランドの経営権を獲得すると、コチ財閥傘下の白物家電メーカーであるBeko Elektronikと民生用電子機器部門を統合し、「Grundig Elektronik A.Ş.」を設立。さらに2009年2月27日には、Arçelik A.Ş.との合併を発表。グルンディッヒ社は、その歴史に幕を閉じました。しかし、かつて世界を席巻したグルンディッヒブランドは、現在も世界各地で様々な製品を通してその名を刻み続けています。その歴史は、ドイツ電機産業、ひいては世界家電業界の歴史において、重要な一頁を飾るものと言えるでしょう。

関連製品:
コンパクトビデオカセット - VP-100 VTR

参考資料:
Grundig AG
Grundig Radio Boy — グルンディッヒの歴史, 1945–1997
Eton Corporation
Grundig Mobile
SATELLIT Radio Club

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