グルーボール

グルーボールは、量子色力学（QCD）において理論的に存在が予測されている、特異な中間子の一種です。通常のハドロンとは異なり、グルーオンのみで構成されているという特徴を持ちます。

クォークの閉じ込めとグルーボール

強い相互作用を媒介する粒子であるグルーオンは、色電荷を持つため、単独で存在することはできません。クォークの場合と同様に、グルーオンもまた、色電荷が中性になるように結合する必要があります。クォークは通常、3つ結合してバリオンを形成するか、クォークと反クォークが結合してメソンを形成します。これに対し、グルーボールは、複数のグルーオンが互いに結合し、全体として色電荷が中性になった状態を指します。

グルーボールの理論的予測

格子ゲージ理論を用いた数値計算によって、グルーボールの存在と質量が予測されています。しかし、グルーボールの崩壊過程など、その性質についてはまだ不明な点が多く残されています。理論的な研究は進んでいるものの、実験的な検証は困難を極めています。

実験的探索と候補

実験的には、f0(1500)と呼ばれる粒子が最も軽いグルーボールの有力な候補として注目されています。しかし、理論的な予測が不確かなため、f0(1500)が本当にグルーボールであるかどうかを断定するには至っていません。グルーボールの性質に関する理論的な情報が不足しているため、実験結果との比較が難しく、グルーボールの同定は依然として大きな課題となっています。

グルーボール研究の意義

グルーボールの研究は、量子色力学の理解を深める上で非常に重要です。グルーボールの性質を解明することで、強い相互作用のメカニズムや、ハドロンの構造に関する新たな知見が得られると期待されています。今後の理論的・実験的な研究の進展が待たれます。

参考文献

Particle Data Group: C. Amsler et al., "Review of Particle Physics," Physics Letters B667 (2008) 1.

関連項目

量子色力学
ハドロン物理学
格子ゲージ理論

もう一度検索