グルーオン

グルーオンとは

グルーオン（gluon）は、ハドロン内部で強い相互作用を伝える役割を担う、スピン1のボース粒子です。質量は0、電荷は中性であり、「色荷（カラー）」と呼ばれる量子数を持つ点が特徴です。この色荷の違いによって、全部で8種類のグルーオンが存在します。

「膠着子（こうちゃくし）」や「糊粒子」と呼ばれることもありますが、一般的ではありません。

グルーオンの特性

他のゲージ粒子とは異なり、通常の温度・密度環境下では、クォークと同様に単独で取り出すことは不可能だと考えられています。また、グルーオン自身が色荷を持つため、グルーオン同士の間にも相互作用が働きます。これは、電磁相互作用を媒介する光子には見られない性質です。この性質により、グルーオンのみで構成された粒子、グルーボールの存在が、格子QCDや超弦理論によって示唆されています。

グルーオンの色

クォークの波動関数はSU(3)の基本表現であり、3成分を持つ列ベクトルの値を持ちます。基底で展開すると、3種類のクォークが存在することと同じになります。これらを比喩的に、赤・青・緑の色価を持つと表現します。反クォークは行ベクトルであり、これには補色、反赤・反青・反緑が割り当てられます。

グルーオンは、SU(3)の随伴表現に属します。これは3×3の行列のうち、エルミートでありトレースが零であるものの空間です。

色の比喩で言えば、赤の列・反青の行の成分は赤-反青を持つ、というように色と補色を一つずつ持っていることに相当します。このうち、トレース成分を除いた8成分が、量子色力学に現れるグルーオンです。

トレース成分

[赤-反赤]+[青-反青]+[緑-反緑]に対応する成分は、各色に対してゲージ変換を施した際（左右からユニタリ行列とその逆行列を掛けたとき）に変化せず（無色ないしは白色）、他の成分とは明らかに異なる表現に属することが分かります。

以上の操作は以下のように表記されます。

$$
\begin{bmatrix}
R \\ G \\ B
\end{bmatrix}
$$

クォークとの相互作用

クォークとの相互作用は、色と補色を対で生成・消滅するような形で起こります。例えば、赤のクォークから赤-反青のグルーオンが放出されると、クォークの色は青に変化します。

グルーオン同士の相互作用は、グルーオン3つが関係するものと4つが関係するものがありますが、いずれも行列の交換関係とトレースからなる演算がゼロにならないもの同士の間に起こります。このような行列は、やはり色と補色が互いに対応しあっているものです。さらに、交換関係が関与していることから、これが本質的にゲージ群の非可換性を源としていることが分かります。

参考文献

Peskin, Michael E.; Schroeder, Daniel V. (1995) (英語). An Introduction to Quantum Field Theory. Westview Press. ISBN 0201503972

関連項目

量子色力学
クォーク
標準模型
* クォークグルーオンプラズマ (QGP)

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