グレイスランド

グレイスランド：エルヴィス・プレスリーの聖地

グレイスランドは、アメリカのロックンロールの象徴、エルヴィス・プレスリーが所有していた邸宅とその敷地を指します。テネシー州メンフィスの広大な敷地に建つこの邸宅は、エルヴィスのファンにとって「聖地」として知られ、年間60万人以上が訪れる人気の観光スポットとなっています。その歴史、建築、そしてエルヴィスとの深い関わりについて詳しく見ていきましょう。

グレイスランドの概要

グレイスランドは、メンフィス中心部から約12マイルの場所に位置し、13.8エーカー（約5.6ヘクタール）の広大な敷地を有しています。白い円柱が特徴的なこの邸宅は、エルヴィスが1957年に購入し、1977年に亡くなるまで生活を共にしました。現在、邸宅の一部は一般公開されており、エルヴィスの命日には世界中からファンが集まります。

また、世界で最も訪問者数が多い私邸（またはお墓）として、ギネス世界記録にも登録されています。1995年には年間75万人以上が訪れるなど、その人気は衰えることを知りません。

エルヴィス自身は1977年8月16日にグレイスランドで亡くなり、彼の両親と祖母と共に、敷地内の瞑想の庭に埋葬されています。

国定歴史建造物としてのグレイスランド

グレイスランドは、その歴史的・文化的価値から、アメリカ合衆国の重要な史跡として認定されています。1982年には博物館として一般公開され、1991年には国家歴史登録財に登録、さらに2006年には国定歴史建造物に指定されました。これはロックンロール関連の場所としては初の登録であり、その価値が公式に認められたことを示しています。

首相訪問と意外な出来事

2006年には、エルヴィスの大ファンである小泉純一郎首相が、ジョージ・W・ブッシュ大統領と共にグレイスランドを訪問しました。その際、小泉首相がエア・ギターを披露し、エルヴィスの楽曲を歌うというハプニングがありました。この出来事は、日米両国で報道され、話題となりました。

グレイスランドの歴史

グレイスランドは、もともと農場として使われていました。その後、S.C.トゥーフという人物が所有し、娘の名前から「グレイスランド」と名付けられました。1939年には、トゥーフの姪であるラス・ムーアが、現在のコロニアル様式の邸宅を建設しました。

1957年、エルヴィス・プレスリーはプライバシーと安全を確保するため、約10万ドルでグレイスランドを購入しました。その後、エルヴィスは両親と共にこの邸宅に移り住み、その後は妻となるプリシラも結婚前にこの邸宅で生活しました。

建築と改築

グレイスランドの邸宅は、黄褐色の石灰岩で造られ、8つの寝室と23の部屋があります。玄関には風の神殿のような円柱があり、屋根付きの入り口の両側にはライオン像が置かれています。

エルヴィスは購入後、自身の好みに合わせて大幅な改築を行いました。自然石の壁、音楽をテーマにした門、プール、ラケットボールコート、そして有名な「ジャングルルーム」などが加えられました。

ジャングルルームは、1976年にエルヴィスの最後の2枚のアルバムのレコーディングスタジオとしても使用されました。

また、瞑想の庭はエルヴィスとその家族が埋葬されている場所であり、ファンにとって重要な場所となっています。

しかし、批評家からはその装飾やデザインについて「けばけばしい」「まがい物」と評されることもあり、その独特なセンスは賛否両論を呼んでいます。

グレイスランドとエルヴィス

グレイスランドは、エルヴィスにとって単なる家以上の存在でした。彼はここで家族と過ごし、音楽を制作し、プライベートな時間を楽しんでいました。その暮らしぶりは、彼の音楽や人間性に大きな影響を与えました。

また、グレイスランドはリサ・マリー・プレスリーの最初の家でもあり、彼女の幼少期を過ごした場所でもあります。現在も毎年クリスマスにはリサ・マリーとその家族がグレイスランドを訪れます。

エルヴィスの死後も、グレイスランドは彼の存在を象徴する場所として、多くの人々に愛され続けています。

グレイスランドの観光

グレイスランドは1982年から一般公開され、多くの観光客が訪れる人気スポットとなっています。邸宅内には、エルヴィスが使用していた家具や衣装、愛車などが展示されています。また、敷地内には博物館やギフトショップ、レストランなども併設されており、一日を通して楽しむことができます。

訪問者は、音声ガイドを利用して邸宅内を見学することができます。また、プレスリー一家に敬意を表して、2階のプライベートルームや、彼が亡くなったバスルームは一般公開されていません。

グレイスランドの向かいには、エルヴィスの自動車コレクションや飛行機が展示されている博物館もあります。また、敷地内にはシリウス・サテライト・ラジオのエルヴィス専門チャンネルのスタジオもあります。

現在のグレイスランド

2005年、リサ・マリー・プレスリーはグレイスランドのビジネス部門の85％を売却しましたが、グレイスランドの所有権は保持しています。現在、グレイスランドは大規模な再開発計画が進められており、ホテルやコンベンションセンターなどの建設が予定されています。

しかし、2024年8月には、グレイスランドが詐欺事件に巻き込まれ、競売にかけられそうになるという騒動も発生しました。幸い、裁判所の介入により競売は差し止められましたが、グレイスランドの今後の動向に注目が集まっています。

ポップカルチャーにおけるグレイスランド

グレイスランドは、音楽、映画、テレビゲームなど、様々なポップカルチャーに登場しています。

ポール・サイモンのアルバム『グレイスランド』や、マーク・コーンの楽曲『ウォーキング・イン・メンフィス』は、グレイスランドにインスピレーションを受けて制作されたものです。

映画やテレビゲームでは、グレイスランドを舞台にしたフィクション作品も多く存在します。これらの作品は、グレイスランドが持つ独特の魅力と、エルヴィスの存在感を示しています。

まとめ

グレイスランドは、エルヴィス・プレスリーの人生と音楽を深く理解するための重要な場所です。その歴史、建築、そしてエルヴィスとの関わりを通じて、彼の人間性や音楽に対する情熱を感じることができます。現在もなお多くの人々を魅了し続けるグレイスランドは、これからもエルヴィス・プレスリーの記憶を語り継いでいくことでしょう。

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