グレゴリウス11世 (ローマ教皇)

グレゴリウス11世は、14世紀後半に教皇として在位した人物です。本名をピエール・ロジェ・ド・ボーフォールといい、フランス出身で、教皇クレメンス6世の甥にあたります。1370年に教皇に選出され、アヴィニョンで即位しましたが、彼の治世は激動の時代でした。

教皇領は、先代のインノケンティウス6世の時代に一度は回復したものの、グレゴリウス11世の時代には再び各地で反乱が頻発し、教皇庁の権威は失墜しつつありました。特に、反乱の中心地であったフィレンツェは教皇によって破門され、教皇庁の指令は各地に届きにくくなっていました。教皇は事態を収拾するため、ロベール枢機卿をチェゼーナに派遣しますが、そこで傭兵隊長ジョン・ホークウッドが虐殺事件を引き起こし、混乱に拍車をかけました。

そのような状況下で、ドミニコ会の修道女カテリーナ・ベニンカーサ、後の聖カタリナが教皇のローマ帰還を強く訴えました。彼女はキリストと同じ聖痕が現れたとされ、非常に敬虔な女性として知られていました。1376年にアヴィニョンを訪れたカタリナは、フィレンツェの破門を解き、教皇がローマに戻ることを強く訴えました。当時、フランスは百年戦争の渦中にあり、アヴィニョン周辺も治安が悪化していたため、教皇はローマも反乱に加担するのではないかと懸念していました。こうした状況から、グレゴリウス11世はついにローマへの帰還を決意し、1377年1月にローマに戻りました。これにより、約70年間続いたアヴィニョン捕囚は終焉を迎えました。

しかし、教皇のローマ帰還は、フランス人の勢力から強い反発を受けました。グレゴリウス11世の死後、後継者としてウルバヌス6世が選出されましたが、これに不満を持ったフランス人枢機卿たちは、ロベール枢機卿を対立教皇クレメンス7世として擁立しました。これにより、教会は二人の教皇が並び立つという前代未聞の事態、すなわち教会大分裂（シスマ）の時代を迎えることになったのです。グレゴリウス11世の帰還は、アヴィニョン捕囚を終わらせるという大きな功績を残したものの、その後の教会の分裂という悲劇の幕開けともなりました。

グレゴリウス11世は、教皇として激動の時代を生き、その決断は後世に大きな影響を与えることになりました。彼の治世は、教会の歴史における重要な転換期であり、その功績と課題は後世に語り継がれるべきです。

以下は、グレゴリウス11世の家系図です。

クレメンス6世 - 叔父
レーモン・ド・テュレンヌ - 甥。プロヴァンスの惨劇とも呼ばれる。Capitaine pontifical（アヴィニヨン教皇庁城主？）

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