グレゴリウス12世 (ローマ教皇)

グレゴリウス12世：教会大分裂と教皇の退位

グレゴリウス12世（1326年 - 1417年10月18日、在位：1406年 - 1415年）は、14世紀後半から15世紀初頭にかけて続いた教会大分裂の渦中に現れたローマ教皇です。ヴェネツィアでアンジェロ・コレルとして生まれ、教会で重要な役割を担う経歴を歩みます。司教、名目上のコンスタンティノープル大司教を経て、インノケンティウス7世の下で秘書を務め、1405年には枢機卿に昇進。翌年、インノケンティウス7世の急死後に行われたコンクラーヴェで、ローマ教皇に選出されました。

しかし、グレゴリウス12世の治世は、教会の分裂という大きな課題に直面することになります。当時、アヴィニョンには対立教皇ベネディクトゥス13世がおり、教会は深刻な分裂状態にありました。コンクラーヴェに出席した枢機卿たちは、分裂の終結を目指し、ベネディクトゥス13世との交渉、そして両教皇の退位を誓約しました。しかし、グレゴリウス12世とベネディクトゥス13世は退位を拒否し、相互不信の中で交渉は決裂しました。さらに、グレゴリウス12世は、新たな枢機卿を任命するなど、アヴィニョン枢機卿会とのバランスを崩す行動を取り、人望を失うことになります。

この状況を打破しようと、1409年にはローマとフランスの枢機卿たちがピサ教会会議を開催。公会議主義の高まりを背景に、両教皇の廃位と新教皇の選出を目指しました。会議には両教皇は出席しませんでしたが、グレゴリウス12世とベネディクトゥス13世は廃位され、ミラノ大司教ピエトロ・フィラルゴがアレクサンデル5世として新教皇に選出されました。しかし、両教皇は廃位を認めず、結果として3人の教皇が並立する事態に陥りました。アレクサンデル5世は翌1410年に急死し、ヨハネス23世がその後を継ぎ、混乱はさらに増していきます。

グレゴリウス12世は、ボヘミアのプラハ大司教ズビニェク・ザイーツから支持を得ていましたが、ボヘミア王ヴァーツラフ4世は中立を保ち、ピサ教会会議を支持しました。一方、ローマ王ループレヒトやナポリ王ラディズラーオはグレゴリウス12世を支持していましたが、1410年にループレヒトが死去すると、後継のジギスムントはヨハネス23世を支持に転じ、ラディズラーオもこれに追随しました。孤立を深めたグレゴリウス12世は1412年、リミニへと逃亡しました。

1414年に開催されたコンスタンツ公会議では、グレゴリウス12世は欠席しましたが、代理人を派遣しました。会議では、グレゴリウス12世を含む3人の教皇が廃位が宣言され、グレゴリウス12世はついに退位に同意。1415年7月4日、正式にローマ教皇の座を降りることになります。彼の退位によって、1417年にマルティヌス5世が選出され、長きにわたる教会大分裂はようやく終結に向かいました。

退位後、グレゴリウス12世はポルトの司教枢機卿としてアンコーナで余生を送り、レカナーティで生涯を閉じました。彼の在位期間は短く、教会大分裂の終結に大きな役割を果たしたとは言えないものの、その生涯は、教会史において重要な転換期を象徴する出来事として記憶されています。

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