グレゴリウス6世 (ローマ教皇)

グレゴリウス6世は、11世紀のローマ教皇であり、その在位は1045年から1046年と短期間でした。本名をヨハネス・グラティアヌスといい、ラテン門の聖ヨハネ教会の首席司祭を務めていました。彼は高潔な人物として知られ、教皇ベネディクトゥス9世の代父でもありました。

ベネディクトゥス9世は、結婚を望んで教皇位を退くことを考え、代父であるグラティアヌスに相談しました。その結果、ベネディクトゥス9世はグラティアヌスに教皇位を譲り、多額の金銭を受け取りました。こうして、グラティアヌスはグレゴリウス6世として教皇に就任しました。

しかし、グレゴリウス6世の教皇就任は、必ずしも教会の安定をもたらしませんでした。放蕩なベネディクトゥス9世に代わってグレゴリウス6世が教皇になったことは、一部からは歓迎されましたが、教皇位を巡る争いは収束しませんでした。かつてベネディクトゥス9世を追放し、教皇となったシルウェステル3世が自らの教皇位の正当性を主張したのです。さらに、ベネディクトゥス9世も教皇位を再び求めるようになったため、事態はより複雑化しました。

グレゴリウス6世は、助祭ヒルデブランド（後のグレゴリウス7世）の助言を受け、ベネディクトゥス9世には手紙や教会会議での呼びかけで、シルウェステル3世には武力をもって事態を収拾しようとしました。しかし、混乱は深まるばかりでした。

事態を収拾するために、ローマ王ハインリヒ3世がイタリアに介入しました。グレゴリウス6世はハインリヒ3世と面会し、王の要請によりストリで教会会議を招集しました。この会議で、ベネディクトゥス9世とシルウェステル3世は聖職を剥奪され、グレゴリウス6世には辞職が勧告されました。グレゴリウス6世は、自身の教皇位がシモニア（聖職売買）によるものであれば、会議も無効であると主張しましたが、最終的には辞職しました。その後、バンベルク司教スイドガーがクレメンス2世として教皇に即位しました。

グレゴリウス6世は、辞任後ハインリヒ3世によってケルンに連れて行かれ、1048年初頭にそこで亡くなりました。グレゴリウス6世に付き従っていたヒルデブランドは、彼の死までケルンに滞在し、その間にクリュニー会の思想に触れたと考えられています。その後、ヒルデブランドはローマに戻り、後に教皇グレゴリウス7世として教会改革を推進することになります。

グレゴリウス6世の在位は短期間でしたが、教皇位を巡る複雑な政治的、宗教的背景の中で重要な役割を果たしました。彼の辞任は、教皇権のあり方について再考するきっかけとなり、その後の教会史に大きな影響を与えることとなりました。

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