グレゴリー・ポール

グレゴリー・スコット・ポール：恐竜復元の先駆者

グレゴリー・スコット・ポール（Gregory Scott Paul, 1954年12月24日 - ）は、アメリカのフリーランス研究家、作家、そしてイラストレーターとして、古生物学の分野で多岐にわたる活動をしています。近年では、社会学や神学にも研究領域を広げています。

古生物学における貢献

ポールは特に獣脚類の恐竜研究、詳細な骨格図、そして生物復元図において、その名を知られています。30年以上にわたり、恐竜の復元に専門的な知識と情熱を注ぎ込んできました。映画『ジュラシック・パーク』、ディスカバリーチャンネルの『恐竜再生 アメリカ』、そして『ダイナソープラネット』など、数々の映像作品で恐竜の専門家としてクレジットされています。

著作活動

ポールは、以下の著作の著者兼イラストレーターでもあります。

Predatory Dinosaurs of the World (1988)
The Complete Illustrated Guide to Dinosaur Skeletons (1996)
Dinosaurs of the Air (2001)
The Princeton Field Guide To Dinosaurs (2010)
Gregory S. Paul's Dinosaur Coffee Table Book (2010)

また、『The Scientific American Book of Dinosaurs (2000)』の編集者も務めています。

恐竜復元のパイオニア

1970年代、ポールは恐竜の「新しい姿」を開拓する上で重要な役割を果たしました。彼はダイナミックなインク画や油絵を通して、恐竜を活動的で、生命力にあふれ、小型の恐竜については羽ばたく姿で描きました。彼の描く恐竜は、それまでの静的なイメージを覆し、恐竜研究に新たな視点をもたらしました。彼の解剖学的な洞察力と描写スタイルは、後の多くの恐竜イラストレーターに直接的な影響を与えています。

ポールは古生物学者と密接に協力し、自身でも古生物学の研究を行っています。彼の描く復元図や骨格図は、一般の人々にとって科学的な基準とみなされるほどの影響力を持っています。彼は常に最新の発見や学説を取り入れ、古い作品をアップデートし続けています。彼の作品の多くは白黒で、インクや色鉛筆で描かれています。また、多くの彫刻家やアーティストが、彼の解剖学的なテンプレートを資料として使用してきました。

ポール自身は、チャールズ・ナイトのような古典的なアーティストから影響を受けており、あまり知られていないアーティスト、ビル・ベリーの復元を高く評価しています。

メディアへの露出

ポールの作品は、100以上の出版物に掲載され、NOVA、Horizon、PaleoWorldなどのテレビ番組でも紹介されています。他の古生物学者と比較しても、彼の作品は多くのドキュメンタリーで取り上げられています。

研究活動

1977年から1984年まで、ポールはジョン・ホプキンス大学のロバート・バッカーと共同で絵画制作を行いました。ポールは古生物学の学位を持っていませんが、数多くの探検に参加し、30以上の科学論文と40以上の一般向けの書籍を執筆または共同執筆しています。

羽毛恐竜と体温調節に関する仮説

ポールは、鳥に似た羽毛恐竜の羽毛は、飛行のために進化したものであり、他の羽毛恐竜にとっては飛行以外の機能は二次的なものであったと提唱しました。この説は、中国で発見された化石によって支持されています。また、彼は基礎代謝率の高い動物だけが、陸上で1トンを超えることができるという「terramegathermy」という体温調節に関する議論を呼ぶ概念を提唱しました。

命名に関わった恐竜

ポールは、以下の恐竜に関する論文を単独で、または共同執筆者として発表しています。

アクロカントサウルス？・アルティスピナクス (後にベックレスピナクスと改名。)
アルバートサウルス・メガグラキリス (後にディノティランヌスと改名。現在はティラノサウルス・レックスの幼体と考えられている。)
アウブリソドン・モルラニ (後にスティギヴェナトルと改名。現在はティラノサウルス・レックスの幼体と考えられている。)
アヴィサウルス・アルキバルディ (新属新種、鳥類)
ギラッファティタン・ブランカイ (ブラキオサウルス属から独立。反論もある)
マンテリサウルス・アテルフィエルデンシス (イグアノドンから独立)
ポタモルニス・スクッチ (新属新種、鳥類)
ドロドン・バンピンギ (新属新種)
ダコタドン・ラコタテンシス (新属)
マンテロドン・カルペンテリ (新属新種)
ダルウィンサウルス・エヴォルティオニス (新属新種)
フクスレイサウルス・ホリングトニエンシス (新属)
ヴェロキラプトル・アンティロプス (デイノニクス・アンティロプスのシノニム。原作版ジュラシック・パークのデイノニクスがヴェロキラプトル名義なのはこの論文が由来)
* モノロフォサウルス・ウカイー (グアンロン・ウカイーのシノニム)

最初の3つは現在、他の分類群として扱われることが一般的です。獣脚類クリプトヴォランス・パウリ（現在のミクロラプトル・ザオイアヌス）の種小名は、ポールの羽毛恐竜の研究を称賛して献名されたものです。セラコクサ・パウリも、彼のイグアノドン類の研究を讃えて献名されたものです。

ポールがデザインした巨大翼竜ケツァルコアトルスの復元を基に、半分の縮尺の空を飛ぶロボットが制作され、1986年の映画『On the Wing』で使用されました。

グレゴリー・スコット・ポールは、古生物学の世界において、研究、執筆、イラストレーションを通じて多大な貢献をしてきた人物です。彼の革新的な視点と精力的な活動は、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

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