グロリア (1980年の映画)

映画『グロリア』：愛と裏切りの逃避行

1980年に公開されたアメリカ映画『グロリア』は、ジョン・カサヴェテスが監督・脚本を務め、ジーナ・ローランズが主演したアクションドラマです。ギャングの抗争に巻き込まれた少年と、彼を匿うことになった中年女性の逃避行を通して、二人の間に生まれる絆と、それぞれの心の変化を描いています。

ストーリー

ニューヨーク、サウス・ブロンクスのアパートに住む会計士ジャックは、ギャング組織の会計情報をFBIにリークしていたことが露見し、命を狙われていました。ある日、ジャック一家が隠れ家として逃げ込んだアパートに、ギャングが押し入ります。ジャックは、偶然コーヒーを借りに来た隣人の独り暮らしの女性グロリアに、6歳の息子フィルを預けるよう懇願します。子供嫌いを公言するグロリアは戸惑いながらも、ただならぬ状況を察し、依頼を引き受けます。

フィルは、組織の不正を記録した手帳を「聖書」として持たされていました。その手帳を狙うギャングの魔の手は、グロリアとフィルにも迫ります。グロリアは、ギャングがジャックの部屋に押し入ったことを知ると、フィルを連れてアパートを逃げ出します。かつてショーガールとしてギャング組織と関わりがあったグロリアは、組織の危険性を知っており、フィルを冷たく突き放そうとします。しかし、次第にフィルとの間に絆が芽生え始めます。

二人は、グロリアの「姉」名義のアパートに身を隠しますが、グロリアは誘拐犯として指名手配されてしまいます。ギャングは執拗に二人を追いかけ、グロリアは隠し持っていた拳銃で応戦します。逃亡を続ける中で、グロリアはフィルに家族の葬儀を提案し、フィルは別れを告げます。

逃避行の中で、グロリアはフィルを置き去りにしようとしますが、思い直して探し回り、ギャングの手下に捕まりそうになっていたフィルを救い出します。そして、ミッドタウンの高級ホテルに立てこもります。グロリアは、フィルに自分の故郷ピッツバーグに一緒に逃げることを提案しますが、フィルはグロリアがギャングと戦うことに疑問を抱きます。「銃を使うのは良くない」と訴えるフィルの言葉に、グロリアは逃避行に決着をつけることを決意します。

グロリアは組織のボスであるトニーに連絡を取り、手帳を持ってアジトへ向かうことを告げます。フィルに現金を渡し、一人でピッツバーグへ行くように告げたグロリアは、トニーと対峙します。グロリアはフィルを助けてほしいと懇願しますが、トニーは組織の掟を破ったグロリアを責めます。しかし、グロリアがフィルへの愛情を語ると、トニーは言葉を失います。グロリアはトニーの前から立ち去り、用心棒を射殺して逃げます。

フィルはグロリアとの約束通りピッツバーグへ行き、グロリアの死を確信して墓地を訪れます。そこに現れたのは、変装したグロリアでした。二人は再会を喜び、抱き合います。

キャスト

グロリア・スウェンソン：ジーナ・ローランズ
フィル・ドーン：ジョン・アダムズ
ジャック・ドーン：バック・ヘンリー
ジェリ・ドーン：ジュリー・カーメン
* トニー・タンジーニ：バジリオ・フランチナ

作品の評価

黒澤明は、本作を「生まれつきの美しさ」と絶賛しました。また、Rotten Tomatoesでは93％、Metacriticでは68点の高評価を得ています。ジーナ・ローランズは、ゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされ、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされています。

その他

映画ジャーナリストの猿渡由紀は、ジーナ・ローランズにインタビューを行い、本作の裏話を聞き出しています。当初、別の女優が主演する予定でしたが、断られたためローランズが主演することになったそうです。ローランズは本作を気に入っていますが、監督のジョン・カサヴェテスは「ただのファンタジーだ」とあまり評価していなかったそうです。

『グロリア』は、アクション映画としての面白さはもちろん、登場人物たちの心の機微を丁寧に描いた、感動的な人間ドラマでもあります。ぜひ、一度ご覧ください。

もう一度検索