グンナール・アスプルンド
エーリック・グンナール・アスプルンド（Erik Gunnar Asplund, 1885年9月22日 - 1940年10月20日）は、スウェーデンを代表する建築家であり、20世紀の北欧建築に多大な影響を与えました。アルヴァ・アールトやアーネ・ヤコブセンらと並び、北欧近代建築の基礎を築いた人物として知られています。
アスプルンドは、その生涯において数多くの建築作品を手がけましたが、その活動期間は建築家として最盛期ともいえる55歳で幕を閉じました。そのため、彼の作品のほとんどはスウェーデン国内に限られています。作品数こそ多くはありませんが、卓越した設計スキル、時代を超越したデザイン、そして人間の心理や物事の本質を見抜いたコンセプトが彼の建築の特徴です。
1885年、アスプルンドはスウェーデンのストックホルムで生まれました。父親は税務署の役人でした。幼少期には画家を志したものの、父親と絵の教師の反対によりその夢を諦め、ストックホルムの王立工科大学で建築を学ぶことになりました。
工科大学では、初期の近代建築運動や、当時の北欧で盛んだったナショナル・ロマンティシズムという建築思潮に触れました。卒業後、王立芸術大学に進学しますが、そのボザール様式の保守的な教育に反発し中退。仲間と共に私設学校「クララ・スクール」を設立し、ラグナル・エストベリやカール・ヴェストマンといった、当時の北欧を代表する建築家たちを招いて指導を受けました。
1913年から1914年にかけてイタリアへ見学旅行に出かけ、帰国後の1915年には、友人のシーグルド・レヴェレンツと共に「ストックホルム南墓地国際コンペ」で1等を受賞し、建築家として注目を集めるようになりました。このコンペで選ばれた「森の墓地」は、アスプルンドの代表作となり、生涯を通して取り組むことになります。
1910年代後半から1920年代にかけて、北欧諸国では北欧新古典主義が主流となり、アスプルンドもその影響を受けました。この時期には、「森の礼拝堂」（1920年）、「スカンディア・シネマ」（1923年）、「ストックホルム市立図書館」（1928年）など、前半生の代表作を次々と発表しました。
1930年には「ストックホルム博覧会」の主任建築家に任命され、鉄とガラスを大胆に使用した近代建築のパビリオン群が、北欧諸国における近代建築の普及に大きく貢献しました。1931年には、母校である王立工科大学建築学科の教授に就任し、後進の育成にも尽力しました。1930年代には、「イェーテボリ裁判所増築」や「夏の家」など、晩年の代表作を生み出しました。
1940年に完成した「森の火葬場」は、「森の墓地」における一連の施設における最後の作品であり、アスプルンドにとっても人生最後の作品となりました。「森の墓地」の設計では、コンペ以来レヴェレンツと共同で作業を行ってきましたが、「森の火葬場」の設計段階では、施主からの指名によりアスプルンドが単独で設計を担当しました。
「森の墓地」全体は、1994年にユネスコの世界遺産に登録されました。これは20世紀以降の建築としては、世界遺産登録の第一号となるものでした。
アスプルンドは、かつて日本はおろかヨーロッパにおいてもその存在が忘れられかけていましたが、近年、日本でも展覧会が開催されるなど、再評価の機運が高まっています。
森の墓地 (Skogskyrkogården, 1915-1940)
森の礼拝堂 (Skogskapellet, 1920)
スカンディア・シネマ (Skandia-Teatern, 1923)
ストックホルム市立図書館 (Stockholms stadsbibliotek, 1928)
ストックホルム博覧会 (Stockholmsutställningen, 1930)
イェーテボリ裁判所増築 (Göteborgs rådhus, 1937)
夏の家 (Sommarhuset, 1937)
森の火葬場 (Skogskrematoriet, 1940)
『アスプルンドの建築 北欧近代建築の黎明』スチュアート・レーデ著、樋口清・武藤章訳、鹿島出版会、1982年
『アスプルンドの建築 1885-1940』川島洋一(文) 吉村行雄(写真)、TOTO出版、2005年、ISBN 4887062575
Website with several photos about Asplunds work on Stockholm Public Library
5 films with English subtitles about the City Library of Stockholm designed by Gunnar Asplund. See the view from the roof, enjoy all the furnitures designed by architect G. Asplund, look into the marvellous Rotunda and so on.
* アスプルンドのホームページ（アスプルンド展実行委員会）
アスプルンドは、その生涯において数多くの建築作品を手がけましたが、その活動期間は建築家として最盛期ともいえる55歳で幕を閉じました。そのため、彼の作品のほとんどはスウェーデン国内に限られています。作品数こそ多くはありませんが、卓越した設計スキル、時代を超越したデザイン、そして人間の心理や物事の本質を見抜いたコンセプトが彼の建築の特徴です。
生い立ちと初期の活動
1885年、アスプルンドはスウェーデンのストックホルムで生まれました。父親は税務署の役人でした。幼少期には画家を志したものの、父親と絵の教師の反対によりその夢を諦め、ストックホルムの王立工科大学で建築を学ぶことになりました。
工科大学では、初期の近代建築運動や、当時の北欧で盛んだったナショナル・ロマンティシズムという建築思潮に触れました。卒業後、王立芸術大学に進学しますが、そのボザール様式の保守的な教育に反発し中退。仲間と共に私設学校「クララ・スクール」を設立し、ラグナル・エストベリやカール・ヴェストマンといった、当時の北欧を代表する建築家たちを招いて指導を受けました。
1913年から1914年にかけてイタリアへ見学旅行に出かけ、帰国後の1915年には、友人のシーグルド・レヴェレンツと共に「ストックホルム南墓地国際コンペ」で1等を受賞し、建築家として注目を集めるようになりました。このコンペで選ばれた「森の墓地」は、アスプルンドの代表作となり、生涯を通して取り組むことになります。
北欧新古典主義とモダニズム
1910年代後半から1920年代にかけて、北欧諸国では北欧新古典主義が主流となり、アスプルンドもその影響を受けました。この時期には、「森の礼拝堂」（1920年）、「スカンディア・シネマ」（1923年）、「ストックホルム市立図書館」（1928年）など、前半生の代表作を次々と発表しました。
1930年には「ストックホルム博覧会」の主任建築家に任命され、鉄とガラスを大胆に使用した近代建築のパビリオン群が、北欧諸国における近代建築の普及に大きく貢献しました。1931年には、母校である王立工科大学建築学科の教授に就任し、後進の育成にも尽力しました。1930年代には、「イェーテボリ裁判所増築」や「夏の家」など、晩年の代表作を生み出しました。
1940年に完成した「森の火葬場」は、「森の墓地」における一連の施設における最後の作品であり、アスプルンドにとっても人生最後の作品となりました。「森の墓地」の設計では、コンペ以来レヴェレンツと共同で作業を行ってきましたが、「森の火葬場」の設計段階では、施主からの指名によりアスプルンドが単独で設計を担当しました。
「森の墓地」全体は、1994年にユネスコの世界遺産に登録されました。これは20世紀以降の建築としては、世界遺産登録の第一号となるものでした。
再評価
アスプルンドは、かつて日本はおろかヨーロッパにおいてもその存在が忘れられかけていましたが、近年、日本でも展覧会が開催されるなど、再評価の機運が高まっています。
代表作品
森の墓地 (Skogskyrkogården, 1915-1940)
森の礼拝堂 (Skogskapellet, 1920)
スカンディア・シネマ (Skandia-Teatern, 1923)
ストックホルム市立図書館 (Stockholms stadsbibliotek, 1928)
ストックホルム博覧会 (Stockholmsutställningen, 1930)
イェーテボリ裁判所増築 (Göteborgs rådhus, 1937)
夏の家 (Sommarhuset, 1937)
森の火葬場 (Skogskrematoriet, 1940)
参考資料
『アスプルンドの建築 北欧近代建築の黎明』スチュアート・レーデ著、樋口清・武藤章訳、鹿島出版会、1982年
『アスプルンドの建築 1885-1940』川島洋一(文) 吉村行雄(写真)、TOTO出版、2005年、ISBN 4887062575
外部リンク
Website with several photos about Asplunds work on Stockholm Public Library
5 films with English subtitles about the City Library of Stockholm designed by Gunnar Asplund. See the view from the roof, enjoy all the furnitures designed by architect G. Asplund, look into the marvellous Rotunda and so on.
* アスプルンドのホームページ（アスプルンド展実行委員会）
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