グーネウス

ギリシア神話の世界には、グーネウス（古希: Γουνεύς）という名前を持つ複数の人物が登場しますが、中でも特に語られるのは以下の二名です。

一人目のグーネウスは、ペロポネソス半島のアルカディアー地方に位置する古代都市ペネオスにゆかりのある人物です。彼はラーオノメーという名の娘の父として知られています。伝承の一つによると、このラーオノメーは英雄ペルセウスの子であるアルカイオスと結婚し、強力な英雄として名高いアムピトリュオーン、そしてアナクソーの母となりました。このグーネウスは、後の時代の主要な英雄たちの系譜を繋ぐ重要な存在として、その名が伝えられています。

二人目のグーネウスは、オーキュトスの子として知られています。彼はテッサリア地方、おそらくはフティアーの南方に位置するキュポスという土地の王でした。彼の名は、名だたる英雄たちが集結したトロイア戦争の物語において、ギリシア軍を率いる武将の一人として登場します。彼は自身の領民であるアイニアーニアー人、そしてペライボイ人たちの軍勢を率いて、敵地トロイアへと向かいました。彼が率いた船団の規模については、伝承によって異なる記述が見られます。一般的には22隻であったとされますが、異説として21隻、あるいは12隻であったとする文献も存在し、古代の記録の多様性を示しています。

激しい戦いが終結し、多くのギリシアの英雄たちが故郷への帰還の途につく中で、グーネウスもまた兵を率いて海路をたどりました。しかし、その帰還の旅は平穏なものではありませんでした。伝説によれば、トロイア戦争で息子を失ったタラントス王ナウプリオスが、ギリシア勢に対する報復を企て、エウボイア島のカペーレウス岬沖で偽りの灯火を焚いて船団を欺いたとされています。グーネウスの船団もこのナウプリオスの策略に巻き込まれ、カペーレウス沖で難破してしまったと伝えられています。この災難から生き延びたグーネウスは、遠く離れた北アフリカの地、リビアの海岸に漂着しました。彼はそこで、キーニュプス川のほとりに移り住み、新たな生活を始めたと語られています。

ただし、この武将グーネウスの最期については、別の伝承も存在します。叙事詩『イリアス』においては、彼はトロイアでの戦いの最中に命を落としたと解釈される記述があります。具体的には、アキレウスの親友であるパトロクロスがヘクトールによって討たれた後の、さらに激しさを増した戦闘の中で戦死したとも伝えられており、その運命は必ずしも一定ではありません。このように、グーネウスという名を持つ二人の人物は、それぞれ異なる系譜や物語の中で語り継がれており、特に武将グーネウスの最期に関しては、複数の伝承が存在しています。

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