ナウプリオス

ギリシア神話には「ナウプリオス」という名前を持つ人物が複数登場しますが、特に言及されることが多いのは二人です。その一人は、海神ポセイドーンとアルゴスの王ダナオスの娘アミューモーネーの子であるナウプリオス。そしてもう一人は、その遠い子孫にあたり、トロイア戦争の後にギリシアの英雄たちへ復讐を遂げた人物です。これら二人のナウプリオスは、しばしば混同されることがあります。

海神ポセイドーンの子、ナウプリオス

最初のナウプリオスは、その出生にまつわるエピソードがあります。ポセイドーンがアルゴスの地を巡って女神ヘーラーと争い、敗れた後に国土に旱魃をもたらした際、ダナオス王は娘たちに水を探させました。水を探しに出たアミューモーネーがサテュロスに襲われそうになった時、ポセイドーンが現れて彼女を救い、その間に生まれたのが彼だと伝えられています。彼は後に、アルゴリス地方に位置する港湾都市ナウプリアの建設者とされ、また、イアーソーンに率いられたアルゴナウタイの一員であったという伝承もあります。

彼の息子たちとしては、ダマストールとプロイトスの名が挙げられます。特にプロイトスの系統からは、レルノス、ナウボロス、クリュトネオースと世代が続き、このクリュトネオースの子として、後に有名になる二人目のナウプリオスが誕生しました。

パラメーデースの父、ナウプリオス

二人目のナウプリオスは、一人目のナウプリオスの血筋を引く子孫です。クレーテー島の王カトレウスの娘であるクリュメネーと結ばれ、パラメーデース、オイアクス、ナウシメドーンという三人の息子をもうけました。

このナウプリオスは、国元で不遇となった王女たちを他国へ送り届けたり、有力者に嫁がせたりする役割を担ったとされます。例えば、アルカディア王アレオスの娘アウゲーをミューシア王テウトラースのもとへ案内したこと、あるいはクレーテー島のカトレウスの別の娘であり、後にミュケーネー王アガメムノーンらの母となるアーエロペーや、自身の妻となったクリュメネーの経緯に関与したことなどが伝えられています。

彼の生涯で最も劇的な出来事は、トロイア戦争の後に訪れます。彼の息子パラメーデースは、ギリシア軍の中でも智謀に長けた人物でしたが、オデュッセウスの陰謀によって無実の罪で処刑されてしまいます。息子の死を知ったナウプリオスは、トロイアへ渡り、ギリシア軍に対して息子の賠償を要求しますが、彼らはこの訴えを聞き入れませんでした。この仕打ちに深い怨みを抱いたナウプリオスは、ギリシアへの帰途、復讐を実行に移します。

彼はまず、ギリシア各地を回り、トロイア遠征で不在の英雄たちの妻たちに不貞を働くよう唆しました。この工作により、アガメムノーンの妻クリュタイムネーストラーはアイギストスと、ディオメーデースの妻アイギアレイアはコメーテースと、イードメネウスの妻メーダーはレウコスと関係を持ち、それぞれの王家や家庭に悲劇の種が蒔かれました。しかし、イーピス王オデュッセウスの妻ペーネロペーだけは、ナウプリオスの策に乗じることはありませんでした。

さらに彼は、エウボイア島のカペーレウス岬で松明に火を灯し、偽りの灯台として機能させました。トロイアからの帰還途上、多くのギリシア艦隊がこの火を港の灯りと誤認して危険な海岸線に近づき、激しい嵐に見舞われて多数の船が難破するという壊滅的な被害を受けました。

ナウプリオスの最期については諸説あります。ペーネロペーへの工作が失敗したことに絶望して自殺したという説などが伝えられていますが、その詳細は定かではありません。

このように、ギリシア神話におけるナウプリオスは、創設者としての側面と、息子への復讐に燃える人物としての側面を持つ二人の重要なキャラクターとして語り継がれています。彼らの物語は、神話時代の人間たちの複雑な関係性や運命の過酷さを象徴しています。

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