ケイシー・ジョーンズとは？意味をやさしく解説

ケイシー・ジョーンズ：伝説の機関士

ケイシー・ジョーンズことジョナサン・ルーサー（ジョン）ジョーンズは、1863年 3月14日にアメリカ合衆国テネシー州ジャクソンで生まれました。彼はイリノイ・セントラル鉄道（IC）に所属する蒸気機関車の機関士として、その名を歴史に刻みました。幼少期にケンタッキー州の町ケイス近くに住んでいたことから「ケイシー」というニックネームを得て、自らもこの綴りを愛用しました。

悲劇的な事故

1900年 4月30日、ミシシッピー州ボーンで、霧と雨が立ち込める中、ジョーンズの操縦する旅客列車「キャノンボール・エクスプレス号」が立ち往生していた貨物列車に衝突しました。この事故で、ジョーンズは唯一の犠牲者となりました。乗客を救うために最期までブレーキをかけ続けた彼の勇姿は、ICの黒人掃除夫で友人でもあったウォーレス・サンダースによってバラードで語り継がれ、今日まで人々の心にヒーローとして生き続けています。

事故の背景

事故の前日、ジョーンズはカントンからの第2列車を運転しメンフィスに到着しました。翌日の勤務に備えメンフィスで宿泊する予定でしたが、第1列車（シカゴ・ニューオーリンズ・リミテッド号）の機関士が体調不良になったため、急遽カントンまでの運転を代わることになりました。ジョーンズは困難な状況でも定時運行に挑むことを好んでいました。

ジョーンズは高性能な機関車、優秀な火夫シメオン・T・ウェッブ（通称「シム」）、そして軽量な客車を率いて出発しました。雨天でしたが、蒸気機関車は湿度が高い方が調子が良いとされていました。しかし、その夜は深い霧で視界が悪く、路線はカーブが多いという悪条件が重なりました。

通常、第1列車はメンフィスを午後11時15分に出発しますが、機関士の交代で95分遅れで出発しました。ジョーンズは遅れを取り戻そうと時速75マイルで走行していましたが、カーブに差し掛かった時、前方の線路に停車している貨物列車を発見しました。火夫のシムが「本線上に何かいるぞ」と警告すると、ジョーンズは「飛び降りろ！」と叫び、シムは衝突直前に飛び降りました。ジョーンズは最後までブレーキをかけ続け、乗客を救おうとしました。

衝突とその後

ジョーンズは逆転機を操作し、エアブレーキを非常位置にしましたが、列車は貨物列車に衝突し脱線しました。ジョーンズがブレーキをかけたため、衝突時の速度は時速35マイルにまで減速し、乗客に死傷者は出ませんでした。ジョーンズは、列車の残骸から救出された際、まだ息があり、ブレーキレバーと汽笛の紐を握りしめていたと伝えられています。彼は近くの駅に搬送されましたが、そこで息を引き取りました。

事故報告書と矛盾点

事故の5時間後、車掌の報告では事故原因は「旗手の信号を見落としたこと」とされました。しかし、イリノイ・セントラル鉄道の公式報告書では、旗手のニューベリーが信号を送ったにも関わらず、ジョーンズが見落としたと結論付けられました。しかし、この証言には裏付けがなく、旗手が本当にそこにいたのか、旗の振り方が悪かったのではないか、という疑問が残されています。

火夫のシムは、信号雷管の爆発音を聞き、旗手を見た後、貨物列車の車掌車のマーカーを見た、と証言しています。しかし、この証言には矛盾があり、信号雷管と旗手、車掌車の位置関係からすると順番が逆になります。もし、シムの証言が正しければ、ジョーンズは旗手の信号を見落としたのではなく、旗手が適切な場所にいなかった、あるいは信号が適切ではなかった可能性を示唆しています。

鉄道史家の中には、ジョーンズの経験からすると信号を見落としたとは考えられない、と公式報告書に異議を唱える人もいます。

シムは、晩年まで「旗手も照明弾も見ていないし、信号雷管の音も聞いていない」と主張し続けました。このため、真相は不明のままです。

大衆文化への影響

この事故は全米で大きく報道され、ジョーンズの勇気ある行動は人々に感動を与えました。彼の物語は多くの歌や物語になり、ディズニーのアニメ映画『勇敢な機関士』でも描かれています。また、彼が乗っていた機関車382号機は「ケイシー・ジョーンズ」の愛称で呼ばれるようになりました。さらに、ジーンズブランドのラングラーは、ケイシー・ジョーンズという作業着会社の名前に由来します。

ケイシー・ジョーンズ