ケイトー研究所

ケイトー研究所とは

ケイトー研究所（Cato Institute）は、リバタリアニズムの立場から政策提言を行う、アメリカを代表するシンクタンクです。ワシントンD.C.に本部を置き、公共政策や政府の役割に関して、積極的に議論を深めることを使命としています。その根底には、「伝統的なアメリカの原理」である小さな政府、個人の自由、市場経済、平和の拡大という思想があります。

設立と変遷

1977年、エドワード・クレーン、マレー・ロスバード、チャールズ・コークによって、カリフォルニア州サンフランシスコで設立されました。研究所の名称は、ジョン・ロックの思想を広めた18世紀の随筆『ケイトーの手紙』に由来し、ロスバードによって命名されました。設立当初は、ロスバードとクレーン、コークの間で意見の相違があり、1981年にロスバードは研究所を離れています。同年、本部をワシントンD.C.に移転し、キャピトル・ヒルに並ぶ最初のシンクタンクとなりました。1993年には、現在のマサチューセッツ通りに拠点を移しています。2002年には、ウェブサイトが「最も参考になるウェブサイト」に選ばれ、また、アレクサ・インターネットの調査では、最も人気のあったシンクタンクのサイトとして評価されています。

主な政策

ケイトー研究所は、新自由主義的な立場から、個人の自由を最大限に尊重する政策を提唱しています。具体的には、最低賃金の廃止、麻薬取締りの停止、積極的差別是正措置の否定、在外米軍基地の閉鎖、他国への不介入などを主張しています。

共和党に近いと見られることもありますが、公式には無党派であり、共和党の宗教右派とは対立する立場をとっています。しかし、実際には、共和党支持者とケイトー研究所の両方に多額の寄付をする人物も多く、また、ワシントンに集まる共和党関連の作家やロビイストなどの人材を抱えているのも事実です。

ケイトー研究所と共和党の間には、経済政策や外交政策において意見の相違も見られます。例えば、2005年にジョージ・W・ブッシュ大統領が提案した社会保障の民営化案は、ケイトー研究所が強く支持していましたが、共和党多数の議会で否決されました。また、政府の介入を嫌う立場から、ブッシュ政権の強権的な姿勢を批判しています。

社会保障に関しては、1995年に民営化計画を策定し、2002年には「社会保障選択」計画へと名称を変更しました。この計画では、被用者が負担分の半分を投資する権利を与える一方、将来の社会保障給付を減額する仕組みが含まれています。

外交・治安政策においては、アメリカの対外介入路線に批判的であり、在日米軍基地の撤廃や日米安保の解消を主張し、日本の自主防衛を推進する立場をとっています。国内の治安政策においては、米国愛国者法への反対や、同性愛行為を違法としたテキサス州の刑法を違憲とした判決を支持しています。

さらに、タバコ産業規制への批判、移民規制の緩和、財政赤字時の増税反対、均衡予算拒否権条項の設立などを主張しています。地球温暖化に対しては懐疑的な立場をとっており、過去の温暖化が停止していると主張する政治広告を出し、気候学者から批判を受けています。

出版物

ケイトー研究所は、定期刊行物として『Cato Journal』や『Regulation』を発行しています。また、『Cato Supreme Court Review』や『Cato Policy Report』などの政策研究や書籍を販売しています。

主な書籍例

Social Security: The Inherent Contradiction
In Defense of Global Capitalism
Voucher Wars
You Can't Say That!: The Growing Threat to Civil Liberties from Antidiscrimination Laws
Peace and Freedom: A Foreign Policy for a Constitutional Republic
Restoring the Lost Constitution
Reclaiming the Mainstream: Individualist Feminism Reconsidered

1977年から1984年まで『Inquiry magazine』を発行していました。

関連情報

関連項目: ダグ・バンドウ
* 外部リンク: 公式ウェブサイト

ケイトー研究所は、リバタリアニズムの思想に基づき、幅広い分野で政策提言を行う影響力のあるシンクタンクです。その活動は、アメリカの政治や社会に大きな影響を与え続けています。

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